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伊丹さんの恋「温泉に誘おう!」−『相棒』二次創作小説


『相棒』のキャラクターを使用して書いておりますが、本編とは全く関係ありません
  cometikiオリジナルストーリーです (c)テレビ朝日・東映
※何気に連載モノ 『相棒 ふたりだけの特命係』TOPの下に作品がまとめてあります


 「だーっ!冗談じゃねぇっ!お前等だけで行って来い!」
警視庁の休憩室。
午後の一服を楽しむ人々の間に、伊丹の怒声が響いた。
一緒に座っている芹沢は、申し訳無さそうに「すみません」と、右手を
挙げて周囲の冷たい視線を散らした。
 「まあ、飲んで落ち着け」
取調中の容疑者に語りかけるように、三浦が買って来た缶コーヒーを
伊丹の前に置いて座る。
 「そうですよ!先輩、声デカ過ぎ!…あ、ども」
芹沢は、三浦から缶コーヒーを受取ると、軽く会釈した。
 「大体、何で俺が―――…」
缶コーヒーを指で弾きながら、憮然とした表情の伊丹が吐き捨てる。
 「だってぇ〜僕等だけで温泉行ったら、先輩スネるでしょう!」
 「スネねーよ!!」
 「いや、スネるな」
三浦は自信たっぷりに言って、コーヒーを口に運んだ。
 「何っ?!」
伊丹は缶を握り締め、三浦を睨む。
 「同期の奥村さんが結婚した時でしょ、警備課の笠井さんが彼女
 (らしき人)と歩いてるの見た時…」
拾ったドングリの数を数えるように、芹沢が軽快な口調で指を折る。
伊丹の鋭い視線が、芹沢を捕らえる…が、芹沢は全く臆してない。
 「あと、総務課の桑原に彼女が出来た時な」
 「そうそう!それから―…」
三浦まで加わり、更に楽しそうに指を折る芹沢に耐えかねて、伊丹
は机を叩いて立ち上がった。
 「それはそれ!これはこれだっ!!大体なんで俺があんなガキ
 連れて、温泉行かなきゃなんねぇんだよっ!!」
三浦と芹沢は目を合わせると、不思議そうな顔で伊丹を見上げた。
 「だって、彼女じゃないスか」
 「当然だろう?」
理解不能な言葉に眩暈を覚えながら、伊丹は顔を真っ赤にして声
を荒げる。
 「当然って何だ!!だっ…第一、かっ…彼女って!?俺が認めて
 ねぇのに、勝手にそんな―…」
 「はいはい、先輩!とりあえず座ってくださいよ」
伊丹の頭から煙が上がっているのを見た芹沢は、子供をあやす要
領で伊丹を宥め、座らせた。またしても痛い周囲の視線には、「本
当にすみませんね」と、頭を下げながら。
 「何がそんなに気に入らねぇかなぁ〜…」
将棋の次の一手が決まらないような顔で、三浦はコーヒーを飲む。
 「全部だ、全部!!(ハッとして)そうだ!お前、女紹介しろ!この
 前、合コン行ったっつってたし!」
伊丹は「これぞ名案!」とばかりに、瞳を輝かせて芹沢を見る。
 「はぁ〜?!嫌ですよ」と、芹沢は心底嫌そうな表情をした。
 「何で?」
不満顔の伊丹を前に、三浦と芹沢は申し合わせたように、大きな溜
息を一つ吐いた。
 「言っときますけどね!千花ちゃん以上に可愛くて、先輩の事好き
 なコなんて、居ませんよっ!!」
 「そうだぞ伊丹!お前、自分がどれだけ恵まれてるか、全然わかっ
 て無いだろ?!」
 「そ…そんなのぁ…」と、伊丹は2人の迫力に押されて口篭る。
 「大体、”好き”って言われておきながら、キチンと向き合わないっ
 てのは失礼ですよ!!」
 「大人の男なら、ちゃんと責任とれ」
 「せっ…責任ってなんだよ!!俺は…」
伊丹の言葉を遮るように、芹沢が机を叩いた。
 「先輩はね、逃げてるだけです!っとに、押しに弱いっていうか…
 女の子から”好き”って言って貰えるなんて、滅多に無いチャンス
 なんですよ?!」と、珍しく芹沢が伊丹を睨む。
伊丹は「ぐっ」と唸って、口を閉じた。
その瞬間を見逃さなかった芹沢が、景気良く「パンッ」と手を打つ。
 「ハイ!じゃ、先輩。千花ちゃん、誘ってくださいね!」
 「がっ?!!」と、伊丹は鳩が豆鉄砲喰らったような顔になる。
 「ああ、今から行って来いよ。この後の取調、俺と木頃でやっとく
 から」
「これで解決」と言わんばかりに立ち上がる三浦に、「了解デス」と、
右手の親指を立てて芹沢は応えた。そこへ伊丹が拳を落とす。
 「何でそうなる?!!」
 「だからぁ〜一度ちゃんと向き合って、ですね…」と、頭を擦りなが
 ら涙目の芹沢が言う。
 「だっ…あ…アイツまだガキだぞ?!とっ…泊まりの旅行に誘う
 なんて―…」
そこまで言って押し黙ってしまった伊丹に、三浦が声を掛ける。
 「大丈夫だよ。あの歳なら、自分の事は自分で出来るし、放って
 おいても…」
 「そっ、そうじゃなくてっ!!泊まりなんだぞ、泊まりっ!!!」
駄々っ子のような口調で、真っ赤になって俯いてしまった伊丹を
見て、三浦と芹沢はようやく理解した。
 「なぁ〜んだぁ〜…先輩、千花ちゃんの事。ちゃんと”女”として
 見てんじゃないですか」
 「なっ…そっ…」
伊丹は慌てて言葉を継ごうとするが、巧くいかずどもってしまう。
そんな伊丹が新鮮で、また可愛らしくもあって、三浦は思わず笑っ
てしまった。
 「お前なぁ。泊まるからって、必ずHしなきゃならんて事ぁねんだ
 ぞ?」
 「わっ!わっ!!わっ!!!」
三浦の言葉を掻き消そうと、必死に声を上げて両手を振り回す
伊丹を見て、遂に芹沢も吹き出した。
 「思春期だ!思春期っ!!」
伊丹は芹沢の頭を思いっ切り叩いたが、大きな芹沢の笑い声は
止む事はなかった。

             * * * * *

顔に”不本意”という文字を貼り付けている伊丹を助手席に乗せ
て、芹沢はハンドルを握っている。
赤信号で停まると、芹沢は隣の伊丹を見た。
 「先輩、ちゃんと誘ってくださいよ?そんな仏頂面してないで」
 「…」
伊丹は応えず、フラワーショップ・斉藤に向かう車窓から、外を
眺めていた。
芹沢は軽く溜息を吐くと、青に変わった信号と同時にアクセル
を踏み込んだ。

             * * * * *

フラワーショップ・斉藤の近くにあるパーキングに車を停めて、
伊丹と芹沢は店に向かった。
 「痛っ!何っスかもぉっ!!」
前を歩いていた伊丹が、突然立ち止まったので、後を歩いてい
た芹沢はモロにその背中に鼻を打ちつけた。鼻を押さえつつ、
固まっている伊丹の視線を辿ると、そこには店先で千花が同級
生位の男と談笑している姿があった。
その男、学校指定の白のポロシャツがよく似合うスポーツマン
風でしかも、イマドキのジャニーズ系な顔をしている。
美少女の千花と並んで立っていると、まさにお似合いのカップル
に見えた。
 「…」
さりげなく伊丹に視線を戻すと、そこには”嫉妬する男”が居て、
芹沢は笑いを噛み殺しながら、「出直しますか?」と提案してみ
る。
 「関係ねぇだろ、別に!」
吐き捨てて歩き出す伊丹の目線は、明らかに千花の前に居る
男に向かっていて…芹沢は「やれやれ」と両手でジェスチャー
を取ると、遅れないように後を追った。
 「あれ、どしたの?」
気配に気付いて振り向いた千花が、ピンクのガーベラを飛ばし
たような笑顔を伊丹に向ける。伊丹はそんな笑顔を直視出来
ずに思わず、目を逸らす。
 「あ…やぁ〜…コイツがお前に用があるんだと!」
 「えっ?!僕!!」
急に首根っこを掴まれて、芹沢は千花と男の前に突き出された
。伊丹のあまりの暴挙に、芹沢はまぬけ面のまま「ども」と、笑
った。
気不味い事この上ない空気が、その場を支配して行く。
 「じゃあ、俺。帰るわ」
沈黙を破ったのは、男だった。
 「え?何か、お話中だったんじゃないの?…えっと…」
芹沢が千花を見て、男の紹介を仰ぐ。
 「同じクラスの佐伯君」
 「佐伯君」と、確認するように芹沢は男を見た。
 「あ…話は終わったんで…」と、今度は佐伯が千花に”怪しい”
 男達の紹介を仰いだ。
 「以前、お姉ちゃんを助けてくれた刑事さん達」
 「ああ!特命係の…」
 「捜査一課の伊丹だっ!!」
伊丹の一喝に、佐伯はひいてしまい「じゃ、失礼します」と、頭を
下げると脱兎の如く駆け出した。つ…と、忘れ物と言わんばかり
に振返ると「斉藤!よ・ろ・し・く・な!」と、言って佐伯は極上の
笑みを残して行った。
千花はその背に、ひらひらと手を振って応える。
 「で?何の用なの?」
未だに佐伯の去った方角を睨んでいる伊丹に、千花が声を掛け
る。
 「いや…」
イタズラを咎められた子供のように、伊丹は俯いた。
 「冷やかしなら帰ってよね。今、忙しいんだから」
千花はクルリと向きを変え、店内に入って行く。
「ああ、もぉ」と頭痛を覚えながら、芹沢が伊丹の腕を突いた。
それが合図だったかのように、伊丹は顔を上げるとハッキリと
した声で言った。
 「話って何だ!?」
千花はキョトンとして振返ると、眉根を寄せた。
 「は?」と、千花と芹沢が同時に声を発した。
 「い…今の男とっ!」
(芹沢は伊丹の後で、コントよろしく大コケしている)
 「別に?大した話じゃないわよ」
 「大した話じゃないなら、言えるだろう?!」
 「先輩、先輩!それじゃ尋問ですって!!それに話はこっち
 が…」
千花に詰め寄り、掴みかかりそうな勢いの伊丹を芹沢が制す。
だがそんな伊丹に臆する事無く、千花は凛とした声で応える。
 「バスケ部のマネージャーが体調崩して入院しちゃったから、
 代わりに一緒に合宿に行ってくれって。これでいい?”ケイジ
 サン”?」
ツンと顔を背けて店内に入った千花の後に、伊丹も続く。
 「なっ…合宿って、泊まりでかっ!?」
 「そうよ〜3泊4日」
 「まさか、行く気じゃねぇだろうな?」
 「行くわよ?皆、困ってるんだもん」
バケツから花を抜き取りながら、千花はサラリと言う。
伊丹はそんな千花に言葉が見つからず、腹話術の人形みた
いに口をパクパクさせていた。
 「他にも女子は行くの?千花ちゃん以外にさ」
見かねた芹沢が、助け舟を出す。
 「ああ。私1人ですって…何か、部費がどうとかで…」
 「アホか!そんなのぁ口実だっ!!アイツはお前を狙ってる
 んだよっ!!」
千花が言い終わる前に、伊丹が吠えた。
話しながら、手の中で小さい花束を作った千花は、目を丸くし
て訳のわからない伊丹の怒声に首を傾げる。
 「はぁ?何言ってんの??」
 「気付かなかったのか!アイツの目!!厭らしいったらなか
 ったぞ!!」
「そうでもないと思いますけど…」と言い掛けた芹沢は、またし
ても伊丹からゲンコツを貰った。
 「大体、10代の男なんてなぁ、ほっとんどケダモノだぞ!!
 ケダモノ!!そんな中にお前1人でなんて―…」
 「ねぇ?心配してくれてるの?…それとも、ヤキモチ?」
喚き散らす伊丹を静観していた千花は、まだ鼻息の荒い伊丹
に顔を近付けて尋ねる。
「ばっ…」と伊丹はたじろいで、一歩退いた。
心なしか顔が赤い。
千花は伊丹の表情を注意深く観察しながら、次の言葉を考え
る。
 「”好きだ”って言ってくれたら、行かない」
千花の言葉に、店内が水をうった様に静まり返る―…。
息を呑んで固まってしまった、伊丹。
そんな伊丹を真っ直ぐ見つめる、千花。
芹沢は、微動だにする事も許されず、目だけで2人を伺う。
重たい沈黙が続いた。
千花は「やっぱりね」というように溜息を吐くと、売り物用のミニ
ブーケを作る作業にかかった。
 「大丈夫よ。2人っきりって訳じゃないんだし」
大袈裟に笑ってみせる千花に、伊丹は苛立ちを覚える。
 「そーゆー問題じゃねぇーだろ!!」
 「”そーゆー問題”にしてんのは、アンタでしょ!!」
 「断れ!!」
 「嫌だ!合宿とはいえ、旅行なんて久しぶりだし♪」
まとまった花束を満足そうに見て、千花は「ふふん」と鼻を鳴ら
した。
 「そんなに旅行に行きてぇなら、俺と温泉に行こう!!」
伊丹の台詞に、千花の手からミニブーケが落ちる。床に散らば
った花が、そのまま千花の心の動揺を表しているようで、芹沢
は慌てて右手を上げる。
 「どーも話が変な方に行っちゃったんだけど、今日は千花ちゃ
 んを誘いに来たんだ。僕と三浦さんも彼女や家族連れて行く
 から、千花ちゃんも一緒に温泉どうかなぁ〜って」
「…ああ、そうなんだ」と、千花は安心したように、へにょっと笑っ
た。
 「何お前、あからさまに安心してんだよ?!」
 「そっ…それは…」と、千花は真っ赤になって口篭る。
 「さっきの男の時とエライ違いじゃねーか?!」
 「先輩、それは…」
全然意識していない男と合宿に行くのと、好きな男に温泉に行
こうって誘われたのでは、かなり意味合いが違ってくると思うの
だが、芹沢の言葉に耳を傾けず伊丹は続ける。
 「それに、なんだよ!”お世話になった刑事さん”って?!」
 「ほ…他に何て紹介しろってのよ!!」
少し涙目の千花が可愛く思えてしまい、伊丹はうろたえつつ大
声を出す事でそれを悟られないようにした。
 「言い方ってモンがあるだろう!!」
 「早い話、彼氏だって紹介して貰いたかったんですね」
”ナントカは犬も食わない”と言うが、まさにそれだな…と思いつ
つ芹沢は呟く。
 「はあっ?!」
伊丹と千花は、同時に違う感情でもって叫んでいた。
 「冗談じゃねぇ!」
 「じゃあアタシ、堂々と彼女って名乗っていいの??」
 「誰がお前みたいなガキ…」
 「ガキガキ言わないでよ!アタシだって、もう立派な女なんで
 すからね?!」
 「けっ!どーこがだよっ!」
 「もーっ!ムカつくっ!!」

             * * * * *

 「それで1時間か…」
三浦は警視庁の休憩室で、大きな溜息を吐いた。
珍しく人の少ない室内で、奥のテーブルに陣取った芹沢は、
三浦に重苦しい雰囲気で、先程の伊丹と千花のやりとりを報告
していた。
 「鈍いヤツだとは思っていたが、そこまでとはなぁ…」
 「僕、千花ちゃんが可哀想でたまんなかったっスよ」
 「確かに…。で、誘えたのか?」
 「あ―…まぁ…。殆どケンカ腰で、売り言葉に買い言葉みたい
 でしたけど。”行かねーのかよ!”。”行ってやるわよ!”って」
2人は揃って頭を抱えた。
 「何とかしてやらにゃならんのだろうなぁ…」
 「ですねぇ〜…」
こんな事なら、伊丹に内緒で温泉に行けばよかった…と、口に
は出さないが、同じ事を考える三浦と芹沢であった。


          .☆.。.:*・ TO BE CONTINUED? .☆.。.:*・


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