このHPは、役者の寺脇康文さんが大好きで大好きで仕方のないcometikiが、
”ネットの片隅で寺脇さんへの愛を叫ぶ”をモットーに自分勝手に叫びまくっているサイトです。
情報入手は不可能と思ってご覧ください。
イラストは全てcometikiの脳内加工処理済です。ご容赦ください。
ご本人・ファンクラブ・事務所等とは全く関係ありません。

はじめにを読んでからご利用ください♪
地球の王様TOPドラマ感想 > 『相棒 ふたりだけの特命係』TOP >

「陣川クンの恋 その後。」−『相棒』二次創作小説


『相棒』のキャラクターを使用して書いておりますが、本編とは全く関係ありません
  ”リクエスト企画番外編”cometikiオリジナルストーリーです (c)テレビ朝日・東映
※何気に連載モノ 『相棒 ふたりだけの特命係』TOPの下に作品がまとめてあります



 「うん。悪いな・・・次は必ず。ああ、お前の好きなトコで
 いいから―・・・」



張り込み部屋の片隅で、三浦と芹沢の視線から逃れる
ように、電話をしている、伊丹。

小声だが、室内が静かなので自然と会話が耳に入ってくる。
三浦と芹沢は買い溜めておいた、食料の中からパンと
缶コーヒーを取り出しながら、何とはなしにそれを聞いていた。



 「ああ。じゃ、切るな。うん」



伊丹は電話を終えると、携帯をポケットに仕舞い、何事も
なかったかのような顔で、2人の元へ戻って来た。

三浦と芹沢はそんな伊丹を、まじまじと見つめる。

妙な空気を感じた伊丹は、堪らず声を上げる。



 「な、何だよ?」

 「いやぁ〜ちゃんと電話入れてんだなぁ、と思ってよ」

 「すごい進歩じゃないスか!先輩!!」



「イヒッ」と笑いながら、芹沢が伊丹分のパンと缶コーヒー
を手渡す。
伊丹は無言で受取ると、缶コーヒーを開けて口に含んだ。





             * * * * *





自宅の居間で「ふぅっ」と溜息を吐くと、気分を切り替える
勢いで、千花は携帯を「パクン」と閉じた。



 「またデート、ダメになっちゃったの?」



夕飯の煮魚や、おひたし等をテーブルの上に並べながら、
心配そうに美花が問う。



 「アイツ、忙しいからね!仕方ないよ!」



「気にしない」という風に笑って、千花は台所へ行って
ご飯をよそい始めた。



 「こぉ〜ら、千花!”アイツ”だなんて。ちゃんと”憲一さん”
 って呼ばないとダメでしょう?!」

 「・・・ケン・・・イチ・・・って、誰?」



イミフメイという表情で、千花が首を傾げる。
美花は、ちょっと大袈裟に両手を腰に当てると、「ぷぅっ」と
頬を膨らませた。



 「誰って、伊丹さんでしょう!”伊丹憲一さん”!もぉ〜っ!
 彼氏のフルネーム位、把握しときなさいっ!!」

 「ちょっ・・・逆に何でお姉ちゃんがフルネーム把握してん
 の??」

 「だって、貰ったもの」



電話機の置いてあるサイドテーブルの引き出しを開くと、
美花は一枚の名刺を取り出し、千花の前へ置いた。



   ”警視庁刑事部捜査一課
    巡査部長 伊丹憲一”



 「最初、鞄盗られた時にね。お店まで送ってくれて、
 ”何かあったら電話してください”って」



思い出し笑いをする美花を見て、千花の中に小さな嫉妬の
火が点る―・・・なんだか美花に負けているような気がして。



 「で?千花は何て呼ばれてるの?」

 「は?アタシ??」





             * * * * *





 「やっぱ、2人の時は”千花”って呼び捨てですか?」

 「○▲□×※!!」



芹沢の突拍子も無い質問に、伊丹は激しく咽た。
床に飛び散ったコーヒーを、三浦が「汚ねぇなぁ・・・」と
ぼやきながらティッシュで拭いてゆく。



 「それとも、何か別の??」

 「そりゃ、お前んトコだけだろ」



興味津々の芹沢に、三浦が冷静なツッコミを入れる。
息を整えながら、涙目で2人を見る伊丹に、三浦が補足する。



 「コイツ、最近。自分の彼女を”姫ちゃん”って呼んでるん
 だよ」

 「ひっ・・・姫ぇ?!!」

 「だぁ〜って!仕方ないじゃないスかぁ〜♪お姫様みたいに
 カワイイんスからぁ〜♪」



パンを握り締めて熱弁を振るう芹沢の周囲に、伊丹はハート
マークが乱れ飛ぶのを見ていた。
伊丹も一応、千花の事を”姫ちゃん”と呼んでいる自分を想像
してみたが、背筋が寒くなるだけだった。。。



 「ねぇ〜何て呼んでんスかっ!!」

 「いいだろ!何でも!!」



対象が現れないまま、張り込みに入って3日目。
そろそろ飽きてきたといった芹沢が、果敢に伊丹に迫る。

伊丹は完全黙秘を決め込んで、口の中にパンを詰め込んだ。





             * * * * *





 「だ、だからぁ〜何でもいいじゃない。それよりホラ!
 食べよう!ご飯冷めちゃう!!」



”一度も名前を呼ばれた事が無い・・・”なんて。



 (あ。一回位あったかもしんないけど、あれはまた違う目的だし)



姉だから、いや。
美花にだから、余計に千花は言いたくなかった。



 (お姉ちゃんの時には、”美花さん、美花さん”ってバカの一つ
 覚えみたいに言ってたクセにっ・・・)



共に食卓に着いた千花の両手が、固く握られているのを見て、
美花が苦笑する。



 「私の時と比べたって、ダメよ?」

 「何でっ!!」



反射的に叫んだ千花は、自白したも同然だと気付いた。
そんな妹をやわらかく見つめて、美花が言う。



 「ココが違うからです」



美花は少し胸を張り、右手を心臓の上に乗せた。





             * * * * *





 「あんまり大事だと、そう簡単に呼べないもんなんだよ」



2人のやりとりを見ながら、先に完食した三浦が缶コーヒー
を飲み干して、呟いた。



 「えーっ!好きなコの名前だったら、呼びまくりたいですよ!」

 「まぁ・・・千花ちゃんは、呼んで欲しいかもしれんな」



三浦の視線に、伊丹は喉を鳴らしてパンを飲み込んだ。



 「ちなみにウチは”おい”とかだけどな(笑)」

 「それは・・・大事過ぎて・・・って事スか?」

 「ははは(笑)。結婚してン十年後も”姫ちゃん”って呼んで
 たら、お前の欲しい物。何でも買ってやるわ」



カラカラと笑う三浦に、芹沢は「約束ですよ!三浦さん!」と
指きりをせがんだ。

伊丹は話題が逸れた事にホッとして、コーヒーを飲むと宙を
あおいだ。





             * * * * *





 「お姉ちゃんは、太朗君の事。太朗君て呼ぶじゃない」



アイスを食べる瞬間に、道に落として食べられなくなったこども
みたいに、千花が言う。



 「お姉ちゃんは、佐伯君をススメたけど?」

 「!」



ふんわり笑うと、美花は「いただきます」をして食事を始めた。
「あとは自分で考えなさい」というように―・・・

千花はそんな姉を見つめて、思い出す。



   そうだ。
   温泉から戻った時も、アイツの態度にムカついて
   ヘコんで・・・

   そしたら、お姉ちゃんが言ったんだ。

   「やめちゃえば」って。

   伊丹は不器用な男だから、苦労する事になるって。
   傷付いたり、落ち込んだりするのが苦しいなら、
   やめなさい・・・と。

   でも、アタシは「やめない」って言った。
   だって、アイツと”恋愛”していく自信があったから―・・・
   ”アタシ達の恋愛”をしていく自信が。



 「はぁ〜・・・やっぱ、お姉ちゃんには敵わないや!」

 「そんな事ないわよぉ〜」



2人は顔を見合わせると、大きな声で笑った。





             * * * * *





電話から3日後の朝。
千花の家の近くの公園で、伊丹と千花は会った。

「張り込み明けだから・・・」と言っていたので、どんなやつれた
格好で来るのだろうと、心配していた千花だったが。
予想に反して、伊丹はダークグレーのスーツにパリッとした白
シャツ。それに濃紺のネクタイをしていた。

・・・どうやら千花に会う前に、シャワーを浴びて来たらしい。



 「悪ぃな。朝から」

 「いいよ。あんまり時間無いけど」



登校前の千花はセーラー服姿で、凛と澄んだ瞳を伊丹に向ける。
伊丹はその視線を、未だに直視出来なくて視線を泳がせていた。



 「あ〜・・・その、だな・・・」



伊丹は頭を掻いて、ごにょごにょと呟いたが、千花には全く聞こえ
ない。
千花は伊丹に歩み寄り、動かしている手を制した。
そして、”きをつけ”の姿勢にさせると、ゆっくり問い掛けた。



 「聞こえなかったから、もう1回言って?」



自然と見詰め合う、2人。

耐え切れず、犬のような唸り声を上げたのは、伊丹だった。

千花は、根気強くやさしい声で問い掛ける。



 「何か、話があるんだよね?」



「間違ってない?」と確認するような千花の瞳に、伊丹は頷く。
千花は伊丹が話し易いようにと、一歩離れて見守った。



 「ゆっくりでいいから、話して。最後まで聞くから」



そんな”大人モード”の千花を見ていると、なんだか自分が
情けなくなって、つい伊丹は口を尖らせてしまう。



 「何だそれ。自分のが”大人です”みたいな、態度!」

 「なっ!?仕方ないでしょう?ア―・・・」



千花の脳裏に3日前の姉の言葉が、浮かぶ。



   こぉ〜ら、千花!”アイツ”だなんて。
   ちゃんと”憲一さん”って呼ばないとダメでしょう?!



千花は、思わず口を両手で覆った。



 (いや、今の状況では呼べないよぉ・・・)



千花の心を知ってか知らずか、伊丹が首を傾げて聞く。



 「何だよ?」

 「・・・別に。(コホンと咳払いして)それより、話って?」

 「それは・・・あのぉ・・・ち・・・」



言葉の終り、空気を飲むようにして口を噤むと、伊丹も
右手で口を覆った。

今度は千花が、首を捻る。



 「ち?」

 「・・・・・」

 「え?血がどうかしたの??」

 「いや!”血”じゃなくて!!ち・・・ちー・・・」

 「ちぃ〜??」



まるきり話が読めない千花は、一休さんみたいに人差し指を
こめかみにあて、伊丹のおもいを汲み取ろうと努力していた。

そんな千花の姿がカワイくて、「千花」と呼んでやりたいの
だが、伊丹にはその2文字がどうしても言えない。
自分の意気地の無さに苛立ちと、怒りを覚えた伊丹は奥歯を
ギュッと噛み締めた。
そして、
目の前の千花の頭を、わしわしと掻き乱した。



 「ちょっ・・・何すんの?折角キレイにしたのに!!」

 「もぉ面倒臭ぇから、”ちー”だ!!」

 「は??」



手ぐしで髪を整えながら、千花は目を更に大きく見開く。



 「名前だよ!お前の!まぁ・・・あんま呼ぶ事もねーだろうけ
 どなっ!」

 「め・・・面倒臭いって、2文字だよ?!その半分しか呼ばな
 いって、どゆこと??」

 「いんだよ!俺だけが呼ぶ、お前の名前なんだから!!」

 「!!」

 「何だ?」



急に顔を真っ赤にした千花を見て、伊丹が驚く。

”名前”を呼ぶより、もっとスゴイ発言をした事に気付きもしないで。

だから、

千花はちょっと、イジワルしてやるのだ・・・



 「け・・・・・」

 「け?」

 「けんけん・・・?」

 「は??」

 「アンタの、名前・・・」



ゆっくりと指を差して微笑むと、みるみる伊丹の顔が赤くなる。



 「だっ!誰がだ!誰がっ・・・ばっ、お前・・・アホかっ!!」

 「まぁまぁ、落ち着いて。けんけん♪」

 「それやめろ!本気でやめろっ!!」



本気で照れて怒鳴る伊丹を、千花はやっぱり愛おしいと思って
しまう。。。



ま。
千花も本気で呼び続ける気など無いのだが、伊丹の反応が
面白くてつい(笑)。



 「いいか!冗談でも絶対他で言うなよっ!!」

 「・・・・・はぁ〜い」

 「何だ!今の間はっ!!」

 「あはははは(笑)」

 「笑い事じゃねーぞっ!!」



いつもは背伸びして、伊丹に合わせなきゃ・・・と思う時もある
千花だが、こういう時は対等で嬉しくなる。



 「おいっ!ちー!!聞いてんのかっ!!」



千花はこのくすぐったい気持ちを、いつか伊丹に伝えられたら
いいなぁ〜と思う。

そして、



 (アタシも早く、アタシだけが呼ぶアンタの名前を決めなきゃね)



と、思うのだ。

おふざけじゃなく、一生呼び続ける名前を―・・・




              .☆.。.:*・ HAPPY END .☆.。.:*・


上へもどる
inserted by FC2 system