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「9月11日の朝に。」−『相棒』二次創作小説


『相棒』のキャラクターを使用して書いておりますが、本編とは全く関係ありません
  cometikiオリジナルストーリーです (c)テレビ朝日・東映
※これは読みきりです 『相棒 ふたりだけの特命係』TOPの下に作品がまとめてあります




朝。

出勤して来る、右京。

組織犯罪対策5課を歩いていると、特命係の電話が鳴っている
のに気付く。
少し早足で部屋に入ると、珍しく先に来ている薫が椅子に逆向き
で座り、背もたれに顎を預けてボーッとしていた。



 「はい。特命係」



右京の声に反応して、振り返る、薫。



 「そうですか。ありがとう」



右京は電話の主にそう告げると、静かに受話器を置いた。



 「あ・・・おはよう、ございます」



ベルの音に気付かなかった事に気付き、薫は反省もこめて
おずおずと挨拶する。



 「おはようございます」



いつものトーンで応えると、右京はネームボードの名札を”出勤”
にしてから、スーツの上着を脱いで帽子掛けに掛ける。
朝の紅茶を入れようとする右京は、コーヒーメーカーの電源が
まだ入っていない事に気付く。

見れば、薫はまた背もたれに顎を乗せて、ぼんやりしていた。



 「どうかしましたか?」

 「え?!」



右京の声に顔を上げる、薫。



 「僕より早く来て座っているのに、まだコーヒーも飲んでいない
 ようなので。何かあったのかと思いまして」



言いながら右京は、本日のカップを選び、着々と紅茶を入れて
ゆく。



 「・・・いえ」



しばらく間を置いて、そう答えた薫に、右京は「そうですか」と返し
、それ以上の追求はしなかった。

紅茶を入れ、自分の席に着き、匂いを嗅いで、一口。

薫はそんな右京を、上目遣いに見る。



 「・・・あの、右京さん?」

 「はい」



薫の話に耳を傾けようと、瞳を向ける、右京。
薫は立ち上がり、正しく椅子に座りなおすと、大きく息を吸ってから
言った。



 「もし、今日が最後の日だとわかったら、どうしますか?」

 「はいぃ?」



普段の薫からは決して出ないであろう問いに、右京はその真意を
計りかねて声を上げた。



 「もし、当り前に来る筈の明日が来なくて、今日で人生が終わる
 んだとしたら・・・」



視線を床に落とし、薫はいたって真剣に言葉を選び、右京に問うて
いる。

右京は、カップをデスクの上に置いた。



 「そうですねぇ。日常生活においては、あまり考えられる事のない
 ものですが、流れゆく時の中で、いつか必ず命の終りはやってき
 ます。自然な形であったり、強引な形であったり―・・・何十年後か
 、何ヵ月後か、明日かもしれませんし、この次の瞬間に”それ”は
 訪れるかもしれません」

 「・・・もし、その時がわかったら。右京さんはどうしますか?」



右京の言葉を噛み締めるように聞いた後、薫は真っ直ぐ右京を見て
言った。

右京は、紅茶を一口飲む。



 「君は、どうしたいんですか?」

 「え?!お、俺ですか?・・・俺は・・・やっぱり、美味い物食って、
 美味い酒飲んで、美和子と・・・美和子、や・・・」

 「?」



口篭る薫を、右京は不思議そうに見つめる。
その視線に耐え切れず、薫は立ち上がると右京に背を向け、言い
切った。



 「美和子や、たまきさん・・・それに!・・・右京さんと一緒に居たい
 です!!」



右京から薫の表情は直接見えなかったが、真っ赤になった耳が
それを教えてくれる。
薫には悟られないように「くすり」と笑って、右京が問う。



 「何があったんですか?一体」

 「えっ!?」



照れ隠しの為、やや乱暴に薫が聞き返す。



 「誰かに、何か言われましたか?」



右京は、優雅にカップを口へ運んだ。

薫はボリボリ頭を掻くと、ドッカリと椅子に座った。



 「昨日、美和子に見せてもらったんです。”最後だとわかっていた
 なら”っていう詩・・・」

 「ああ。8年前・・・2001年9月11日。現地時間午前8時45分か
 ら始まった、アメリカの同時多発テロ。その追悼集会やTVで朗読
 された詩ですね」

 「はい」

 「”あなたが眠りにつくのを見るのが、最後だとわかっていたら、
 私はちゃんとカバーをかけて、神様にその魂を守ってくださる
 ように祈っただろう。あなたがドアを出て行くのを見るのが、最後
 だとわかっていたら、わたしはあなたを抱締めるようにキスをして
 そして、またもう一度呼び寄せて、抱締めただろう―・・・”
確か、
 このような詩だったと記憶しています」
              (詩:最後だとわかっていたなら より引用

 「なんか俺、読んでてグッときちゃって。巧く言えないんスけど
 ”明日”って来るのが当り前で・・・今日は無理でも、明日がある
 からとか思ってたけど、でも、そうじゃなくて。もし、今日で最後
 なんだったら・・・せめて。大事な人に、大切な事だけは言って
 おきたいな・・・って」



とつとつと語る薫の声を聞きながら、紅茶を飲み終えた右京は、
カップを置くと目を細めた。



 「いいと思いますよ」

 「は?」

 「”もし”という仮定も大事ですが。所詮、人間はいつ・どんな形
 で自分が死ぬかを、知る事は出来ません。ですから、毎日を。
 一瞬、一瞬を、亀山君らしく生きていられたら、それで充分だと
 僕は思います」

 「はい!」



右京の言葉に、薫は笑顔全開で頷く。
右京も微笑んでそれに応えると、昨日の読みかけの本に手を
かけた。



 「・・・あのぉ、右京さん?」

 「はい」



”話はまだ終わってないんですが・・・”というように、薫が声を
掛ける。



 「右京さんは、どうしたいですか?」



耳をピンと立て、ふさふさの尻尾を左右に揺らしながら、”待て”
の姿勢で右京の言葉を待つ、薫。
どうしても答えを聞きたいらしい。

右京は開いたばかりの本を閉じ、「そうですねぇ」と呟いた。



 「最高のクラッシックを聞きながら、一番好きな本を読み、美味
 しい紅茶をいただきましょうか」



右京の回答にガックリと肩を落とし、「そうっスか」と言うと薫は
自分もデスクに向った。・・・が、右京はまだ語り続けている。



 「そして、夜はいつもと同じように『花の里』で一杯やりたい
 ですねぇ」



”いつもと同じように”という言葉に、薫はキラキラと瞳を輝かせて
振向く。



 「それって・・・俺も、含まれてます?」

 「君の都合が悪くなければ」

 「・・・・・そうですか」



綻んでしまう口元をどうにか引き締めて、薫は自分のデスクに向う。
そして右京に見えないように、小さくガッツポーズをした。



 「亀山君」

 「はっ、はいっ!!」

 「今晩、よければ飲みに行きませんか?」



『花の里』へ―・・・



 「はい♪あ!美和子も呼んでいいですか?」

 「勿論です」



早速、携帯を取り出す薫を見てから、右京は本を開いて目を落とした。







                                     − 終幕 −


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◆ あとがき ◆



”右京さんと薫ちゃん”編。
ショート×ショート第2弾でございます。



この中に登場している、詩。
『最後だとわかっていたなら』は実在しています。
出版もされていたりします。

ので、全文をお読みになりたい方は、ネット検索か書店で
探してみていただくといいかなぁ〜と思います。



私は後者で、のほのほと目的もなく本を探して歩いていたら、
この詩集に呼ばれました。
なんとなく開いてみると・・・
立ち読みで泣きそうになっていて、慌てました。

そして、色々と考えさせられて。
考えて・・・このお話が出来ました。



”明日が来る”っていうのは、ホントはスゴイ事で。

あなたと出会えた事は、奇跡で。



それを、

”伝えなくてもわかるだろう”じゃなくて、

”わかっていても、伝えよう”って。



せめて、大事な人達だけには。。。



思っているだけでは、伝わらないとおもうから。

言葉で、態度で、

あなたに伝えたい。



なんだか、巧くまとまらないのですが・・・(大汗)。

そんな事をおもったのです。



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