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「陣川クンの恋」−『相棒』二次創作小説


『相棒』のキャラクターを使用して書いておりますが、本編とは全く関係ありません
  ”リクエスト企画番外編”cometikiオリジナルストーリーです (c)テレビ朝日・東映
※何気に連載モノ 『相棒 ふたりだけの特命係』TOPの下に作品がまとめてあります



 「すみません!危ないですから、どいてください!」



警視庁の廊下を、そう言いながら歩いている陣川の足取りの方
が、たどたどしい。
周囲の人間は迷惑そうに道を開けるが、彼は全く気付いていな
いようだ。





             * * * * *





 「失礼します!」



特命係に響いたその声に、振返った薫は「わっ!」と驚き、
持っていたコーヒーカップを落としかけた。
そこには、でっかい”花束オバケ”が居たから。



 「よいしょっと!はぁ〜…花もこれだけあると重いですね!」



来客用のテーブルに荷を降ろすと、清々しい笑顔で陣川が
言った。



 「どーしたんスか?陣川警部補、コレ…」

 「課長に叱られまして。”ウチは花屋じゃないんだ!捨てて
 来い!”って(笑)。でも花って心が和むから、どれだけあっ
 てもいいと思いませんか?」

 「…思いませんか?…って。限度ってモンがあるでしょ!!
 大体こんなのウチに持ってこられても―…アレ?」



言い掛けて、薫が首を捻る。



 「どうかしましたか?亀山君」



2人のやりとりを自分の椅子に深々と座り、紅茶を愉しんで
いた右京が声を掛ける。



 「いやぁ…前にもどっかで似たような事言った気がして?」

 「ええ。ありましたねぇ」

 「えーっ!何でしたっけ?!覚えてんだったら、教えてくだ
 さいよ!右京さん!!」



陣川の存在を忘れ、右京に駆け寄る、薫。



 「おや。忘れてしまいましたか?」

 「いや、忘れたっちゅうか…ヒント!ヒントがあれば、思い
 出します!」



やっぱり覚えてないという事なのだが、薫は自信満々に
胸を張る。
あと1つヒントがあれば、今にも謎が解けそうなのだ。

「ゴホン」と陣川が1つ大きな咳払いをする。

右京と薫は動きを止めて、陣川を見た。



 「お話中失礼しますが、今日は大事な報告があるんです!」



その言葉に薫は青ざめて、陣川の肩を掴んだ。



 「今度は何やったんスかぁっ!?いいですか?とにかくひた
 すら謝って、免職だけは取消してもらえるようにちゃんと―…」

 「亀山さん!誰がクビですかっ!僕はちゃんと仕事してます
 よっ!!」



薫の手を振り解くと、陣川はスーツの乱れを整え、呆れたように
溜息を吐いた。



 「・・・」



その”仕事ぶり”で過去、どれだけ被害を被ったことか…右京と
薫は、同時に遠い目をした。
始末に負えないのは、本人に”自覚”が無いからで。
おそらく、今後も彼の”仕事”に巻き込まれるのだろうと思う。



 「それより、見つけたんです!!」



陣川が拳を握り締め、瞳を輝かせた。
薫は肩を落とし、花の匂いで咽返る来客用の椅子に「ドカッ」と
腰を下ろした。彼の勘が”やっかいな事になるぞ”と告げたから。



 「強盗ですか?殺人ですか?」

 「違います!運命の女性(ひと)です!!」



陣川も、薫の向かいに座る。



 「そう。運命の―…はあっ?!犯人じゃ無いんですか!?」

 「一目でわかったんですよ。”この女性だ―…”って」



薫の言葉は、もはや陣川の耳には届いていないようで。。。
2人の真ん中に置かれた色鮮やかな花々が、陣川と重なり
それが彼の心の内を現しているように見える。



 「キレイで優しくて、ホント。花の精じゃないかって位で…僕、
 きっと彼女に会う為に生まれて来たんだと思うんです!」



己の世界でバラ飛ばしまくりの陣川を見て、薫は頭を抱える。
この男の恋愛絡みにおいても、すんなりと事が運んだ例が
無いからだ―…よくて三角関係。最悪、殺人事件にまで発展
する。



 「で!既婚者の亀山さんに、結婚する為のアドバイスを
 いただきたくて!!」



「はうはう」と尻尾を振る陣川に耐え切れず、薫は右京に
助けを求める。



 「右京さぁ〜ん…」



右京は渋々立ち上がると、2人の前に歩み寄った。
そっと、花束に手を伸ばす。



 「陣川君。アドバイスの前に、1つよろしいですか?」

 「はい!なんでしょう?!」

 「その”想い人”というのは、花に関係するお仕事をされて
 いるのではありませんか?」



右京の言葉に、陣川はゴクリと唾を飲み込む。



 「さすが、杉下警部…そうです!彼女、フラワーショップ斉藤
 っていうお店を1人で切り盛りしてるんです!」

 「…”フラワーショップ斉藤”?」

 「亀山さん、ご存知なんですか?」

 「いや、それって………」



薫は確認の為に、右京を見上げる。
右京は「しれっ」と応えた。



 「千花さんの所ですね」

 「あーっ!そっか!あぁ、あん時と…って、え!?陣川さんの
 運命の女性って、じゃあ…」



薫の中で色んなピースが1つになり、最初の疑問は解決した
ものの、新たに生まれた”やっかいの種”に「サッ」と血の気が
引いていくのを感じた。

そして、嫌な予感というのは何とも的中するもので―…



 「美花さんっていうんですよ!美しい花って書いて!」



陣川はデレデレの表情で、我が事のように照れて頭を掻いた。





             * * * * *





 「しっかし、よりによって美花さんとはなぁ…」



陣川の去った特命係は、いつも通りの穏やかな時間が流れて
いた(花束オバケが増えた以外は)。
薫はコーヒーメーカーから、新しいコーヒーを注いでカップに口
をつけた。

右京は何やら、分厚い洋書に目を落としている。



 「いつから気付いてたんですか?右京さん」

 「はい?」



飄々とした顔を上げる右京に、薫はカップの淵を噛んで苦笑する。



 「陣川さんの相手が、美花さんだって事ですよ!」

 「ああ。同じでしたから」

 「確かに、同じシチュエーションでしたね。でも、それだけじゃ
 わかんないでしょう?」



空いた手で、労わるように花に触れながら、薫が問う。



 「状況ではなく、センスがです」

 「は?」



”イミフメイ”と目を見開く薫に、右京は少しばかり眉間に皺を
寄せて答える。



 「以前、芹沢刑事が運んで来た物と、花の種類がほぼ一致
 します。”花を買う事”が目的で無い彼らが、それでも花を買
 うという行為を繰り返すのですから、アレンジは作り手に一任
 しているのではないか?と思いまして。花束といえど、やは
 り個性は出ますからねぇ…同一人物。つまり美花さんが作ら
 れたものではないかと」

 「はあ…」

 「何度も言いますが、君は観察力を鍛えた方がいい」

 「!!」



薫は息を呑んで、歯を噛み締める。
「アンタの観察力と記憶力の方が、異常なんだよ!!」と。

薫の心中などお構いなしで、右京は本に目を戻した。

その隙に地団駄を踏む、薫。
「ほう」と一息吐いてから、改めて右京を見る。



 「ところで…美花さんて、結婚してませんでしたっけ?」

 「そう記憶しています」



右京は本を読むのを止めもせず、答える。



 「……何で教えてあげなかったんですか?」

 「ご本人が仰らない事を、他人の僕が言うのもどうかと思い
 まして。君は何故、言わなかったんですか?」

 「言えませんよぉ〜!あんな恋愛街道爆走してる人に!!
 それに、アドバイスはしたんだから、いいじゃないですか!」

 「”アドバイス”?」



右京が目を丸くして、薫を見る。



 「何か?」

 「いえ。物は言いようだと思いまして」





             * * * * *





 「伊丹刑事!斉藤千花さんとお付き合いされてるって、本当
 ですかっ?!」



捜査一課に飛込んで来るなり、伊丹目掛けて暴言を吐く、陣川。

車座になって捜査資料を読んでいた、伊丹の手から「バサバサ」
と紙が落ちる。恥ずかしいやら、腹が立つやらで、硬直している
男の代わりに、三浦と芹沢がそれを集める。

聞こえなかったのかと思い、陣川は更に続ける。



 「千花さんて、伊丹刑事の彼女なん―…」

 「だあ〜〜〜っ!オイ!経理課のっ!!いきなり湧いて出て
 何言いやがる!!」



伊丹は大声で陣川の言葉を遮ると、問答無用で胸倉を掴んだ。



 「ハーイ、先輩。そこまでですよ」



伊丹の肩を叩きながら制す、芹沢。



 「アンタも突然、どーしたってんですか?」



三浦は伊丹の手を解き、陣川に視線を向ける。



 「千花さんと付き合ってるって聞いたので」

 「誰に?」



今や警視庁内では、知らぬ者も珍しい程。伊丹と千花の関係は
広まっていたりする(ロビーで散々やらかしているので)。
しかし、知らなかった…よりによってこんな”面倒な人間”に誰が
教えてしまったんだろうか。と、三浦は眩暈を覚えつつ訊ねた。



 「亀山さんです」



陣川の、ヘロッと答えた名前が悪かった。



 「あ…の…特命係のクソバカメ〜ぇっ!」



未だに”隠してる”と思い込んでいる、盲目な男は怒髪天を突い
て、ロケット花火の如く飛び出して行ってしまった。

「あ〜あ…」と頭を抱える、三浦と芹沢。



 「どうします、アレ?」

 「ほっといたら戻って来るだろう?」

 「………来ますかねぇ??」



三浦と芹沢は、顔を見合わせる。
きっと、帰って来ないだろう―…千花の事で怒鳴り込みに行って
いたとしても、あの2人の事だ。話はそれだけで終わらない筈だ。
過去の因縁やら、何やらまで引っ張り出して喧嘩を始めた日には
、1ヶ月経っても終わるまい。

「はあ〜…」と大きな溜息を吐く、三浦と芹沢。

2人の横で、陣川だけが呑気に成り行きを見守っていた。



 「あのぉ。伊丹刑事にお話聞きたかったんですけど、急用ですか
 ?」

 「・・・」



陣川に対して一瞬殺意を覚える、三浦と芹沢。





             * * * * *





組織犯罪対策5課は、薫と伊丹の怒声で満ちていた。

先刻、「ちょっと出てきます」と言って居なくなった、右京。
そんな特命係へ、止めに入るだけムダだとわかっている角田は
、渋い顔でデスクに座っていた。

部屋の入口で入るのを躊躇している、三浦と芹沢を見つけた時
、角田は思わず駆け寄った。



 「オイオイ!困るんだよぉ〜仕事になんないからさぁ。早くアレ
 引き取ってもらえる?」

 「…すみません」



頭を下げる2人は、まるで問題児を抱えた親のようだ…と思った。

三浦と芹沢の後をついて来た陣川は、まるで他人事のように
渦中へ入って行く。



 「あのぉ、失礼します」



薫と伊丹は、陣川に全く気付かない。
1cmも空いてないんじゃないか?という位の距離で、ガン見しな
がら叫んでいる、2人。
ギリギリの所で、掴み合いには至っていない…



 「だから!言っていい事と、悪い事があんだろ!!」

 「んだよ!小せぇ男だなぁっ!いい加減、腹括れよっ!!」

 「テメェに言われたかねぇよ!女房の尻に敷かれっぱなしの
 ”シキガメ”のクセに!!」

 「あ゛ぁ゛っ?!何だ、そりゃ!?」

 「敷物だ!お似合いじゃねぇか、シキガメ!!」

 「巧いな、それ……って、貴様っ!!」



「ドンッ」と薫が、伊丹に体当たりを喰らわせた。
それを受ける、伊丹。



 「伊丹刑事っ!!」

 「あ゛ん?!」



膠着状態が続くかと思われた場面で、陣川の声が響く。
伊丹に釣られて、薫も思わず振返る。



 「お聞きしたい事があるんですけどっ!」



そんなひたむきな陣川の姿を、特命係のすぐ外で見守っている
、角田・三浦・芹沢。
この男、ただ空気が読めないだけなのか、強者なのかがわから
なくなってきていた。



 「え?アレ??まだ、聞いてなかったんスか?」



驚く薫に、陣川は「はい」と答える。
思わず後ずさる、薫。



 「何だよ?」



妙な空気に、伊丹も半歩引く。



 「僕!美花さんと結婚しようと思うんですけど、アドバイス
 もらえませんかっ!!」

 「!?」



キラキラと瞳を輝かせる陣川とは対照的に、白くなる、伊丹。



 「伊丹刑事!将来の義弟の為に、お願いします!!…あ。
 美花さんの方がお姉さんだから、僕がお義兄さんになるん
 ですかね?いやぁ〜…何だか照れますけど、”お兄ちゃん”
 って呼んでもらって構いませんよ♪」



三浦と芹沢が、陣川に背を向け密談を始める。



 「おい。美花さんて確か、結婚してたんじゃないか?」

 「ええ。先輩、それでフラれてますから」

 「おい、面白そうだな。俺も混ぜろよ」



角田が参戦しようとした瞬間―…



 「誰が呼ぶかっ!第一、美花さんは既に結婚してんだよっ!!」



キレた伊丹が叫んだ。

かつて自分も惚れた女性だから、その魅力はよくわかる。
だがしかし。
ここまで図々しく(よく言えば積極的に?)言い放たれると、無性に
腹が立った。それは、伊丹とは正反対の陣川であるが故かもしれ
ない。

陣川は、呆然と立ち尽くしている。



 「おい、伊丹。もうちょっと言い方があるだろ?」



薫が伊丹の肩を叩き、耳元で囁く。
その声で我に返る、伊丹。反省を込めた瞳を陣川に向けるが、
逆に睨まれた。



 「嘘吐かないでください!美花さんは、独身です!!」

 「いや、嘘もなにも……」



目の据わっている陣川にたじろいで、伊丹は薫に助けを求めた。



 「あのぉ…陣川警部補。ヒジョーに残酷なんですが、事実です」



薫はなるだけ穏やかなトーンで、それを告げる。



 「亀山さんまでそんな事言うなんて…僕、失望しました!!」



陣川は、大袈裟に肩を落とし溜息を吐いた。

薫は、思い出す。
陣川の長所にして、短所でもある”粘り強さ”を。。。
いくら言っても、聞かないのだ。自分で納得するまで、この男は。
薫はヤケクソ気味に、頭を掻いた。



 「じゃあ、お言葉ですけど!陣川さんは、なんで美花さんが
 独身だって断言出来るんですか?!」



緊迫した空気を、角田・三浦・芹沢、それにいつの間にやら、
大木と小松も加わり、固唾を呑んで行方を見守っていた。

陣川は殊更大きく胸を張り、得意満面に答える。



 「美花さん本人に聞いたからです!」



「はあっ??」と、全員が一斉に抜けた声を上げた。



 「それ、本当に美花さん本人でした?」

 「失礼ですよ、亀山さん!いくら僕でも、運命の女性の顔を
 誰かと間違える訳無いじゃないですか!」



「あ、わかった!」と、外野で芹沢が手を挙げる。



 「実は、離婚しちゃったとか!!」

 「伊丹。お前、千花ちゃんから何か聞いてないのか?」



三浦の問いに、しばし腕を組んで考える、伊丹。



 「いや。聞いてねぇ」

 「お前じゃ頼りねぇからな!」

 「黙れ!カメ!!もし本当にそうなら、アイツは絶対。俺に
 言う!!だぁ〜〜〜っ!もぉっ!!このままじゃ埒明かねぇ
 からよ、陣川警部補。もう1回、俺らの前で美花さんに聞いて
 もらえますか?」

 「いいですとも!」





             * * * * *





 「だからぁ…何で俺まで巻き込むんだよ!」

 「元はと言えば、テメェがこっちに振って来るからだろうが!」



フラワーショップ斉藤の前まで来ても、薫と伊丹は小声で揉め
ていた。

2人を振り返る、陣川。



 「行きますよ!」

 「………はい」



張り切る陣川の後ろで、「何やってんだ、俺」と互いに思いながら
、薫と伊丹は返事をした。



 「こんにちわー…あれ?」



勇んで店内に入った陣川が、不思議そうな声を上げた。
それに気付き、薫と伊丹も店内へ入る。



 「右京さん!何やってんスか?!」



そこには、美花と談笑する右京の姿があった。



 「おや?これはお揃いで」



薫の声に振り向くと、右京はおどけて見せる。



 「何で、杉下警部がココに?しかも、美花さんと2人きりで―…」

 「”2人きりで”というのは、言葉に語弊がありますねぇ。ここは
 密室でもありませんし、先程まで華道教室の先生もいらしてた
 んですよ?」



陣川の質問に、「ねぇ?」と美花に同意を求める、右京。

美花は、笑顔で頷く。



 「本当、ついさっきですよね?3人でお花について話してたん
 です」

 「右京さんが、花??」



右京の博識さを知る薫は、違和感を覚えて首を捻る。



 「切花を長く保つコツを教えていただいたんですよ」



右京は薫にだけわかるように、ウインクした。



 「ああ!」



薫は「ポン」と、手を打つ。
そういえば”花束オバケ”がまだ、特命係に置きっ放しだ。
前回も、薫の自宅やら(右京も持ち帰ったし)、『花の里』、
それにヒロコママの店等などに配り歩いたのだが…いかんせん
花の命は短くて、配り切る前にしおれてしまった物もあったのだ
と、薫は思い至った。



 「さすがはプロの方々です。大変、勉強になりました」

 「そんな、大した事ないです」



美花は頬を染め、右手を顔の前で左右に振る。

そんな美花に見惚れる、陣川。



 「えぉほんっ!!」



伊丹は咳払いをして、当初の目的を忘れている陣川を睨んだ。



 「美花さん!あの…今日は、その…お聞きしたい事が―…」

 「美花さん、お礼に今夜お食事でもいかがですか?」



真っ赤な顔に、熱い瞳で美花を見つめる陣川の告白を、明らか
にワザと遮って、右京が言った。



 「右京さん!?」

 「警部殿!!」



薫も伊丹も、右京の暴挙に対して不満の声を顕にする。



 「喜んで♪」



と、ほぼ同時に、のほーんとした綿菓子みたいに甘い美花の声。



 「え゛っ!!」



これがシンクロの競技だったら、確実に金メダルが獲れるであろ
う反射と表情で、薫と伊丹が美花を見る。

美花は「きょとん」としていた。



 「あ、あのぉ〜美花さん。ダンナさんは………?」



ゴクリと唾を飲み込んで、恐る恐る伊丹が訊ねる。



 「あ、今居ません」



やわらかいクリーム色の花が開いたように、笑う美花。

伊丹は口を「カパー」と開けて、固まってしまった。

逆に陣川は、「ホラホラァ♪」と小躍りした。



 「いつ、離婚されたんスか?」



残念そうに言う薫に、美花は首を傾げる。



 「ご主人の帰国は、明日でしたね?」



涼やかな声で、右京。



 「はい??」



薫・伊丹・陣川は、展開について行けず理解放棄を表明した。

だがそんな3人にはお構いなしで、美花は右京に応える。



 「はい!半年ぶりなんです。シドニーに居る彼のお兄さんが、
 体調崩されてしばらく看病してたんですけど―…もう日常生活
 も問題無い程、回復されたからって。ようやく明日!」



「パンッ」と手を叩き、嬉しそうな美花。

陣川はアッパーカットを喰らった足取りで、よろよろと美花の前に
出た。



 「けっこん…結婚、指輪は??」



美花のキレイな左手の薬指を差す、陣川。



 「あ、コレ。実は失くしちゃったんです…そそっかしくて、私」



分厚い雲さえ吹き飛ばす勢いで、美花は笑う。



 「・・・」



もう、陣川に言葉は無かった。



 「気が済みましたか?」



気付けば、陣川の隣に右京が居る。



 「杉下警部ぅ〜…」



半泣きの陣川の肩を「ポンポン」と叩いて、宥めてやる右京。



 「最後までキチンと話を聞かないからです。君はいつも先走る」

 「…すみません…」



すっかり色を失くしてしまった陣川から、薫と伊丹へ視線を移す
右京。そこにはクッキリと怒りの色が………



 「君達も。彼に振り回されてどうするんですか!これがもし事件
 だったら、犯人確保が遅れるかもしれないのですよ!!しっか
 りなさいっ!!!」

 「すみませんでした」



一喝された薫と伊丹は、ひたすら頭を下げるしかなかった。



やはり、最後はこうなるのだ。
大型の台風みたいに、色んな物を巻き込んで…だが、今回は
被害の少ない方だろう。
先手を打った右京のお陰で、”大きなこども”が2人。叱られた
だけで済んだのだから。。。

残るは”花束オバケ”の貰い先探しだ。

早速、今夜から始めなくてはなるまい…花の命は短いのだから。

さしあたって、薫は美和子に。
右京はたまきの元へ…という所か?





             * * * * *





”花屋説教トリオ”。



フラワーショップ斉藤店内に於いて、右京にマジ説教喰らった3人
として、薫・伊丹・陣川は陰でこう呼ばれる事になる。

一体、どこから情報が漏れたかは、極秘だそうです・・・








            .☆.。.:*・ HAPPY END ? .☆.。.:*・



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● あとがき ●


今回のお話は、”イタ恋板”にてki-chanさんからリクエスト
いただいて出来上がりました。

私では登場させる事がなかったであろう、陣川クン!!

いかがでしたでしょうか??


ちょっと、リクエスト内容と違った方向へ落ちてしまったかも
しれないのですが、お許しくださいませ。
(千花ちゃん出せなかったし・・・)



中盤で、陣川クンが「美花さんは結婚してる」と知って、
そこで諦めてしまうバージョンも書きました。
すると、その後。
特命係で、角田課長と薫ちゃん。そして、伊丹さんの3人が
コーヒーを飲んでしまうという、アリエナイ展開になってしま
いまして(大汗)。
しかも、伊丹さんが超ヘコんでお通夜状態!!
会話が一歩たりとも進まないので、途中放棄。

陣川クンが諦めず、突き進む!!という展開でなんとか
最後まで書ききりました!!

よかった、よかった。:゚(。ノω\。)゚・。



果たして、次。
陣川クンが登場する機会があるのか、無いのか??
わかりませんが。

ひとまず、楽しんでいただけたらシヤワセです!!


                     2009.9.28 cometiki拝



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