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伊丹さんの恋「就活しよう!」−『相棒』二次創作小説


『相棒』のキャラクターを使用して書いておりますが、本編とは全く関係ありません
  cometikiオリジナルストーリーです (c)テレビ朝日・東映
※何気に連載モノ 『相棒 ふたりだけの特命係』TOPの下に作品がまとめてあります





             * * * * *



 「あれ?なんか、いつもと違いません?真っ白。。。」



真っ白な床、そして背景の中に立つ、薫。
不思議そうに周囲を見渡す。



 「今回は動きが無いので、セットを組まなかったそうですよ」

 「・・・セットって、右京さん」



隣に立っている右京が、事も無げにサラリと言うのを聞いて、
薫はちょっと苦笑した。



 「でも、この扱い酷くないっスか!?」

 「まあ、新鮮というかな・・・」



薫を中心にして、右京の対に芹沢と三浦も立っている。
芹沢は不満気に床を踏みしめ、三浦は諦めたように溜息を
吐いた。



 「あれ?伊丹のヤツ、何やってんの?」

 「あ。先輩の事は放置でいいらしいですよ、今んトコ」



一番端で何やら「ぼそぼそ」言っている伊丹を、「ふ〜ん」と
眺めてから、薫は天を仰いだ。



 「うぉ〜い作者!ホントにコレで始めるのかよ?」



 はい。
 始めてしまいます。

 てか、もう始まってます。



 「”てか”ってなんだ!”てか”って!!」

 「亀山君、”親”は選べませんから。諦めましょう」

 「右京さぁ〜んっ!!」



 そんなこんなで、はじまりです。。。





             * * * * *





 「いいか?!もう1回よく考えてみろよ?」



伊丹。
画面左端にて、携帯を掴んで懇願している。

その隣に間を空けて、芹沢・三浦・薫・右京の順で立ち、それを
眺めている状況。

薫、腕組みして芹沢に訊ねる。



 「おい、今度はどうしたってんだよ?」

 「千花ちゃん、大学に行かないらしいんですよ」

 「おやおや。では、家業をお手伝いされるのでしょうか?」

 「それが、本人はそうしたかったらしいんだが、美花さんに断
 られたらしくて・・・」

 「進学して欲しいみたいっスね」





             * * * * *





千花の家は、花屋を営んでいる。

だが、数年前に両親が他界して、急遽。姉の美花が家業を
継いだ。
念願の大学に行くのを諦めて、千花と生活していく為に社会人
となったのだ。

美花はそれを後悔していないが、千花は今でもそれを引き摺
っている。
”早く自分も働いて、姉を楽させたい”という想いが強いようだ。

現在、
美花は結婚して、家を出ている。
お店には毎日通いでやって来て、働いて家に帰る生活。
旦那は小さいながらも、友人と会社を共同経営していて、結構
忙しい人だ。
(先日、一生分の休暇をもらってしまったから余計に・・・)
帰りが遅くなったり、泊り込みだったりすると、美花は千花の所
で食事をしたり、泊まったりする事もある。

なんでこんな生活をしているのかと言えば、やっぱり千花の
心遣いで。。。
結婚が決まった姉を、この家に縛り付けておきたくないという
気持ちがあったからだ。

「高校生の1人暮らしなんて!」と美花は怒ったが、千花の
想いに打たれて、家を出る事にした。
だが、
美花も頑固で、「実家の近く!!」と希望した為、新居からの
通勤時間は徒歩で15分程だ。

千花は、高校を卒業したら自分が店を継いで、姉にはゆっく
りしてもらいたい・・・と考えていたのだが、そこでまた喧嘩
になった。

「大学へ行きなさい!」と言う、美花。

「絶対、行かない!」と言う、千花。

千花は頑なに進学を拒否していて、今はこっそり就活を始めて
いたりするのだ。

それを知った伊丹が、「たんま!」をかけた次第。





             * * * * *





 「だから!大学行ってからでも、就職は出来るだろう!!」



伊丹が携帯に向って、吠える。



 「そっかぁ〜…アイツも千花ちゃんを進学させてやりたいんだ
 なぁ…」



しみじみと呟く薫に、芹沢が「いやいや」と手を左右に振った。



 「先輩のアレは、”親心”じゃなくて、”下心”です!」

 「はあっ?!」



薫は、思いっきり抜けた声を出して、ちょっと間抜け面になって
いる。

そんな薫の肩を、三浦が宥めるように叩く。



 「今はな、就職させたくないんだ」

 「何で?!」



薫は眉間に皺を寄せて、三浦を見た。



 「嫉妬…でしょうか?」



涼しい声で、だがハッキリと言う右京に、三浦と芹沢は深く頷く。

しかし、薫だけがわからない。
説明を求めて、手を上げる。



 「右京さん。全く意味がわからないんですけど…」

 「”学校”という場所には、通常同年代の人間が多く集います。
 が、”会社”には様々な世代の人間が集う…という事ですよ」



噛んで含めて説明したつもりの右京だったが、薫の表情は相変
わらず冴えない。

見かねた芹沢が、核心そのものを言ってやる。



 「他に好きな人が出来ちゃうんじゃないか?って心配してるん
 ですよ!!」

 「あ゛ぁ゛っ?!それが就職反対と何の関係があるんだよ!」



やはり、右京の話は理解出来ていなかったようだ。
薫は芹沢に半切れ気味に、向って行く。

三浦が、芹沢の間に身体を入れてそれを阻止する。



 「だからなぁ。千花ちゃんは同世代よりも、年上の方が好みだ
 と思い込んでるんだよ!アイツは!」

 「大学に入れば、あと4年は自分だけを見てくれると思ってる
 みたいっスね、先輩は!」



三浦と芹沢の言葉に、薫は顎を落とす。



 「受験勉強してなくても、とりあえず手当たり次第受けてみろ!
 お前なら必ずどっか入れるから!な!?」



こちらの喧騒は全く耳に入っていない様子の伊丹が、携帯に顔を
押し付けて叫んでいる。
・・・今にも土下座しそうな勢いである。

薫は、頭を振る。
そして、ジェスチャーを交えつつ、三浦と芹沢に言葉を繋いだ。



 「千花ちゃんは、”伊丹だから好き”なんだぞ!年上とか年下
 とか関係なくさ!だから別に、大学に行こうが、社会人になろ
 うが、関係なくないか?」

 「そうなんスけどねぇ…」

 「そうなんだがなぁ…」



薫の言葉に、芹沢と三浦は腕を組んで頭を垂れた。

その様子に、右京が「くすり」と笑う。



 「あら。これは皆さん、お揃いで」



”ふらり散歩中”という足取りで、右京の隣にやってくる、小野田。



 「官房長!!」



薫・三浦・芹沢の3人が、声を揃えて背筋を正した。

伊丹は電話に夢中で、その存在に気付かない。。。



 「何やってるの?ヒマなの?」

 「えっ!?いや、その…これは、ですね…」



小野田の生温い問いに、薫はしどろもどろになる。
三浦と芹沢は、言葉を発する事も出来ずに固まったままだ。

右京が1つ小さな溜息を吐いて、小野田を見た。



 「官房長こそ、どうしてコチラへ?」

 「ちょっと近くに用事がありましてね、それで」

 「ご用件の方は?」

 「済みました。後は、雑用ばかりです。優秀な部下を持っている
 と、上はヒマでね。退屈なんです」



言い終り、小野田は薫・三浦・芹沢を見て微笑む。

”蛇に睨まれた蛙”―…

3人は一斉に「どうっ」と全身に脂汗を流した。



 「大体、この不況時になぁ、就職先なんて早々見つかるモンじゃ
 ねぇぞ!!」



1人、違う汗をかきながら携帯を更に握り締める、伊丹。

あまりの必死な声に、小野田が視線を向ける。



 「どうしたの、アレ?」



小野田は、伊丹を指差すと、右京に訊ねた。



 「我々には関係の無い事です」

 「相変わらずだねぇ、お前は。ねえ、どなたか就職先をお探しな
 のかしら?」



やんわり右京から目を移すと、今度は芹沢をロックオンして小野
田は質問した。



 「あ…はい。あの…せんぱ…いや、伊丹刑事の、彼女が、その」



逆らえる筈も無く、網の上のホタテのように口を開く、芹沢。

「よくできました」という笑顔で、更に問い掛ける、小野田。



 「おいくつ?」

 「高3です」

 「カワイイ?」

 「はい!」



懸命に答える芹沢に、小野田は「ふむ」と顎に手を当てた。



 「雇おうか?僕」

 「えっ!??」



ぽそりと呟いた小野田の言葉に、薫・三浦・芹沢が瞬間冷凍
された鯉みたいに固まった。



 「ご冗談を」



諌めるような口調で言った、右京に小野田は口の端を少し
上げる。



 「本気ですよ。個人的な秘書っていうの?あれ、欲しくてね」

 「オモチャではありませんよ」

 「わかっています」



穏やかな物言いの中に、強い殺気を感じて、薫・三浦・芹沢は
、笑顔を貼り付ける事も出来ず、青ざめていた。

ブリザードが吹き荒れる中、相変わらず”別世界”で携帯を握り
しめている男の背中を薫が叩く。



 「んだよ!?」

 「雇ってくれるらしいぞ」

 「あ゛?!」



振り向いた伊丹は、にこやかに右手をヒラヒラ振って存在を
アピールしている、小野田と目が合った。
「ひゅっ」と息をのんで固まる、伊丹。

薫は更に、伊丹の肩を叩く。



 「固まってねぇで、何とか言えよ!!」

 「まぁアレだ。下手な会社よりは安泰かもしれんぞ?!」

 「先輩!いいお話じゃないっスか!!」



早くこの場から逃げ出したい、薫・三浦・芹沢は懸命に伊丹を
説得に回る。
小野田には聞こえない(と思われる程度の)小声で。

伊丹も、身をかがめて3人に問う。



 「や…雇うって、刑事になれって事か?」



あれだけの騒ぎを全く聞いていなかった伊丹に、3人は頭を
抱える。

薫が頭を掻き毟りながら、乱暴に答える。



 「よくわかんねーけど、個人的な秘書っつってたぞ」

 「スケジュール管理とか、雑用じゃねぇのか?」

 「でも、”個人的な”ってトコが何か、意味ありげですよね」



芹沢の言葉で、4人の間に気不味い沈黙が流れた。
各々、色んなシチュエーションを妄想しているらしい。。。



 「だぁーっ!!ダメだ!ダメだ!!」



伊丹が両手を振り回して、妄想を掻き消し叫ぶ。
息を整え、真っ直ぐに小野田を見た。



 「官房長。大変ありがたいのですが、そういう世界には足を
 踏み入れさせたく無いので、お断りさせていただきます」



正装した声でキッパリ言い切ると、45度に頭を下げて伊丹は
また小野田に背を向けて、携帯と向き合った。

その姿に目を丸くする、小野田。右京を見る。



 「”そういう世界”って、何かしら?」

 「警察関係者の秘書となると、やはり危険も伴いますから、
 それで…という意味でしょう」

 「そう?あんまりいい意味に聞こえなかったんだけど」



微笑んでいる小野田の目の奥が、ギラリと光ったのを見て、
薫・三浦・芹沢は慌てた。
黒く深い闇が、周囲を支配しそうになったからだ。
きっと、殺されるよりも性質が悪いその”闇”―…



 「あのっ!アイツ今ちょっと、テンパってまして!なあっ?!」

 「そーなんですよ!先輩とにかく、千花ちゃんが他の男に
 盗られるんじゃないかって…就職よりむしろ、そっちの心配
 重視で!!ねぇっ?!」

 「どんないい条件の会社でも、納得しないんですよ!ですか
 ら―……」

 「あら、そういう事」



3人の必死の説明に、納得した小野田。

「そうなんです」と、安堵の声を揃えた3人の顔はフルマラソン
後のように汗だくだった。。。

と。
小野田がスタスタ、伊丹に向って歩いて行く。
そして、伊丹の肩を「ぽんぽん」と叩いた。



 「あ゛ぁ゛っ?!!」



伊丹はまたしても薫の所業だと思い、ガン飛ばしながら振り
返る―…

「ぶにょっ」と、頬に小野田の指が食い込んだ。



 「・・・」



”世界の終りは、きっとこんな感じだろう・・・”と、薫・三浦・芹沢
は思った。



 「君が雇いなさい」



全ての音を吸い込むかに思えた沈黙に、小野田の朗らかな
声が響く。

まだ頬に指を食い込まされたままの伊丹は、ひっついてしま
った喉をなんとか生み出した唾液を飲み込む事で、開いた。



 「ひゃ…ほれは、ははのけいい゛れふから…」
 (訳:いや、俺はただの刑事ですから)

 「永久就職、ね?」



伊丹の言葉を一切聞かず、小野田が言い切る。

伊丹の手から、携帯が落ちた。

小野田はようやく指を放すと、視線を携帯に向けた。



 「落ちたけど?」

 「・・・」



小野田の言葉も耳に入らない程、伊丹は灰になっていた。



 「あら。僕、変な事言ったかしら?」



不思議そうに振り返る小野田に、薫・三浦・芹沢はひきつっ
た笑みで応える。

右京が、小野田に向って一歩踏み出す。



 「時期尚早なのです」

 「時期?確か、日本では16歳で結婚出来ると思ったんだけど、
 女性は。違った?」

 「いえ」

 「まさか、中坊でもないのに、独占欲だけ一人前の甲斐性無し
 って訳じゃないよねぇ?」



小野田は研ぎ澄まされた瞳で、伊丹を袈裟懸けに斬り付ける。



 「官房長。そろそろ、お戻りになられた方がよろしいかと」



いたたまれなくなった右京は、目を伏せ小野田に退場を促す。



 「はいはい。邪魔者は消えます」



軽く手を上げ、薫・三浦・芹沢に挨拶を済ませると、小野田は
靴音を鳴らして、去った。
戻って来ないようにと、右京も同行する。

薫・三浦・芹沢は大きく溜息を吐いて、額の汗を拭った。
そして、”永久就職”という呪文で消滅しかけている伊丹に、
声を掛ける。



 「そ…そうは言っても、タイミングってもんがあるしよ!」



タイミングも何もあったもんじゃ無かった薫が、先輩面して苦笑
する。
だが、内心。なんのかんの言いつつも、気分を害した相手を再
起不能に陥れて帰った小野田に、改めて恐怖していた。



 「そうだぞ、伊丹。あんまり気にするな!」



伊丹の背中を撫ぜながら、励ます三浦。
だが、内心。”結局それが一番いい解決法なんだろうなぁ”と
思っていた。



 「とりあえず、いきなり電話切れてますから、千花ちゃんに
 フォロー入れとかないとね!先輩!!」



すかさず、落ちていた携帯を拾って、伊丹の手に握らせる、
芹沢。
だが、内心。”こんな人相手で、千花ちゃん本当にシヤワセ
なのかなぁ…”と思ってみたりした。







伊丹は、そんな3人の声をどこか遠くで聞きながら、実はこっ
そり千花のドレス姿とか、新婚生活なんかにおもいを馳せて
いた(笑)。



 「やっぱ、2人の名前を一文字づつ入れたいよなぁ…」



本人気付かず囁かれた言葉に、精神的ダメージを心配して
いた3人が顔を上げる。

どこか夢見心地になっている伊丹の顔を見て、3人は拳を
握り締めた。



 (そこまで考えてんなら、さっさとプロポーズしやがれ!)



奥歯を噛み締め、そう同時に思った事は言うまでもない。






              .☆.。.:*・ HAPPY END .☆.。.:*・


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