このHPは、役者の寺脇康文さんが大好きで大好きで仕方のないcometikiが、
”ネットの片隅で寺脇さんへの愛を叫ぶ”をモットーに自分勝手に叫びまくっているサイトです。
情報入手は不可能と思ってご覧ください。
イラストは全てcometikiの脳内加工処理済です。ご容赦ください。
ご本人・ファンクラブ・事務所等とは全く関係ありません。

はじめにを読んでからご利用ください♪
地球の王様TOPドラマ感想 > 『相棒 ふたりだけの特命係』TOP >

伊丹さんの恋「もしもお前が。。。」−『相棒』二次創作小説


『相棒』のキャラクターを使用して書いておりますが、本編とは全く関係ありません
  cometikiオリジナルストーリーです (c)テレビ朝日・東映
※何気に連載モノ 『相棒 ふたりだけの特命係』TOPの下に作品がまとめてあります




    もしも、お前が背を向けたなら

    その時俺は、どうするだろう―…





「…ん?けんけん??」



今まで一度も見せたことねぇ、やわらかな笑顔で「じゃあな」と
言って背を向けた。
きっと、二度と振返らない。何を言っても…
きっと、二度と戻らない。その決意が伝わって来る。
肩越しにゆっくり手を振り、遠ざかってゆく、アイツ。
その後姿を、俺は…見ていたハズだった。



「…ちー?」

「大丈夫?」



だけども。
今、目の前にはちーが居て。心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。



「顔色悪いよ?」

「…ああ…」



2、3度瞬きして状況を把握する。
流れ込んでくる、周囲の喧騒。
そうだ。
今日は、ちーと映画を見に来ているんだ。



「悪ぃ。寝てた」

「いいよ。アタシが解説してあげるから」



上映後の映画館。
客は皆、席を立ち。清掃員が次の客居れをするべく掃除をしていた。
残っているのは、俺達だけだ。



「出よう」

「立てる?」

「ちょっと、悪い夢見ただけだ」



本当に、悪夢。
アイツが警察を辞めて、俺の前から居なくなるなんて!
アリエナイ冗談だ。
なのに、やけにリアルなアイツの声が耳から離れない。
なんだってんだ?全く。。。



「ね。ココ座ってて。パンフ買ってくる」

「え?俺も…」

「いいから!座ってて!」



「動いちゃダメよ」と母親みたいな口調で言って、ちーが売店へ駆
けていく。俺は肩を竦めて、指定されたソファに座った。
寝覚めが悪い所為か、気持ち悪い。
軽く目を閉じ考える。
昨夜、変なモノ食ったっけ?いや、食おうと思ったんだけど冷蔵庫
が空だったから、何も食わずに寝たんだ。朝も…そういや、食って
ないな。
だからだろうか?でもそんなの、張り込みしてたらよくあることだ
し―…



    「じゃあな」



ああ、クソ!
美女の囁きならまだしも、よりにもよってあのバカの声が耳から離
れないなんて!!
頭痛を覚えて、こめかみを押さえる。



「大丈夫じゃないじゃん。けんけん」



目を開ければ、パンフを片手に持ったちーが心配そうに首を傾げて
いた。



「…おい。その呼びかた、ヤメロっつったろ?」

「なんだ。やっと気が付いた」



ふんわり笑うと、ちーは少しだけ安心したように溜息を吐いて、俺
の隣に座る。
こいつにはいつも、心配かけてばっかだな。
今日も、折角流行のアクションものを俺の為に選んでくれたのに…。



「亀山さんが、どうかしたの?」

「うぇっ?!」



ちーの口から出た言葉に動揺して、自分でも聞いたことの無い声が
出た。確かにこの気分の悪さの原因はアイツだが、俺はそのことを
言ってないぞ?と、思って。



「うなされてたから」



ちょっと待て!寝言でアイツの名前、呼んでたってか?!そりゃあ
気分もサイアクだ!!吐き気もするわ!!と、心の中で悪態吐いて、
俺は口元を手で隠す。



「信用ないなぁ〜…アタシ」



ちーは低く呟くと、項垂れて顔をパンフで覆った。



「いやっ!そういう訳じゃなくてなっ!!」

「言ってみただけ」



狼狽する俺に、ちーが顔を上げて「けろん」と微笑む。
くそー…この表情がたまらなくカワイイんだよなぁ…。素直じゃな
い俺に「それでもいいんだよ」って、想ってくれてるのが伝わって
くる。
どっちがガキなんだか、わかりゃしねぇ。
俺は、見た夢の内容を話して聞かせた。
一笑されて終りのような、しょうもない夢。だけど、ちーは一度も
瞳を逸らすことなく耳を傾けてくれた。こっちが対応に困ってしま
う程に。



「な。悪夢だろ?」



笑い話にして終わらせようと立ち上がる俺の腕を、ちーが掴んで引
き止める。



「ね?お願いが出来たんだけど!」

「は??」



「それ脈絡オカシクねぇか?」とツッコミ入れる前に、ちーがバッ
グの中から長方形の箱型の包みを取り出した。大きさは、ちーの両
手に乗る位。



「コレ、杉下さんに届けて欲しいんだ!」



なんで警部殿?!話の展開について行けず、眉間に皺が寄る。
しかし、ちーの表情は至って真剣だ。何か理由があるんだろう。



「ん…じゃあ、明日…」

「今スグ!」

「はぁっ?!お前、これからメシ食いに行くって…」

「ごめん!こっち優先!!」



俺に箱を握らせると、ちーは顔の前で両手を合わせた。これは、
「うん」と言うまで引かないな。別にそんなにしなくても、ちーに
頼まれれば嫌とは言えないんだが…なんて、口が裂けても言わない
けれど。
そうだ。
今日は折角の映画で、寝てしまったという負い目もある。だから、
言うことを聞かねばならんのだ。



「わぁ〜ったよ!届けりゃいいんだな?」

「うん。お願い!」



渋々という顔で頷けば、春の妖精みたいな笑顔が返ってくる。
…っとに、俺以外にそういうカオ見せんじゃねぇぞ。と言っても、
わかんねーんだろうなぁ、コイツには。
呑気に「いってらっしゃい」と手を振っている。
はいはい。行ってきますよ。





             * * * * *





「失礼します!」



金曜の夜。”デッカイ当り”を引き当てたとかで、角田課長達が戦
利品を持ち帰った。その整理を、特命係が仰せつかったらしい。故
に、土・日だというのに休日出勤させられるハメになったと”バカ
メ”が嘆いていたのを芹沢から聞いた。
だから、当然。杉下警部もココに居るだろうと思ったのだ。
小さなその部屋は、大量(大漁?)の押収物で溢れていた。



「おや?伊丹刑事。休日出勤ですか?」



自分のことは棚上げで、警部殿が振返る。



「コレを頼まれたので!」

「どなたからでしょう?」



やや乱暴に手渡すと、きょとんとした瞳で問われた。



「え?…あー…その、ち……さ、斉藤です!」

「ああ。千花さんですか」



わかって聞いてんじゃねぇのか?と、歯噛みしながら堪える。警部
殿が包を開けようとするのを見つつ、いつも嫌でも目に入る男が居
ないことに気付く。
と、いうか。
押収物によって、警部殿以外の人間の痕跡が消されていた。
まるで最初から彼一人のように…。



    「じゃあな」



またしても耳元でヤツの声が響く。三半規管が麻痺しちまったみて
ぇに、眩暈がする。



「大丈夫ですか?」

「あ。えぇ…」



あんま、大丈夫じゃねぇんだろうな。足元がぐらぐらして、目が霞
む。



「伊丹刑事。ちょっと、こちらへ」



警部殿がソファの上の荷物を片付けていくのを、どこか別世界の出
来事みたいに眺めていた。俺は空いたスペースに促されるまま、腰
を下ろす。



「アイツは…?」

「もう………と思いますよ?」

「…え?」

「ムダです」

「?!」

「戻るハズもないでしょう」



薄いフィルター越しに、警部殿の凛とした声が耳に入ってくる。
何を言ってるんだ?
「ムダ」だと?「戻らない」だと??
アイツが―…?!!
「じゃあな」と言って背を向けた、アイツの姿は夢じゃなかったの
か?あれは、現実??



「何やってんだ?お前??」

「へ?!」



渾身の力で目を見開くと、そこにはあのバカが居た。いつもと変わ
らぬ間抜け面で。



「…てめぇ…こそ、何やってんだよ!!」

「あ!そうだ。お前、コレ買わねぇ?」



「ナイス・アイデア!」といった表情で、”まろやかイチゴ”なる
缶ジュースを差し出す。



「いらねぇ」

「何だよ!買えよ!100円ポッキリでいいから!」

「何のセールスだ!!」



売り言葉に買い言葉で、気付けば取っ組み合いの喧嘩になりそうな
勢いだ。



「亀山君。間違えてボタンを押したのは、君のミスです。責任を持
って”まろやかイチゴ”を飲むべきですよ」

「だって右京さん!俺は、炭酸が飲みたくって自販機まで行ったん
ですよ?!なのにこんな甘ったるそーなモノ!!」

「どんなに喚いたところで、君の150円が戻ってくるとは思えま
せんがねぇ」

「150円は無理でも、100円なら!なっ!」

「だから、何で俺に振るんだよっ!」

「いーじゃねぇーか!どーせ、金の使い道に困ってるんだろう?」

「困ってねぇよ!つーか、困ってても貴様に使う金は無い!」

「んだとぉ〜…」



俺の胸倉をヤツの手が掴んだと同時に、警部殿の手が鳴った。



「今日、徹夜したいなら止めませんけど。どうします?」

「わかりましたぁ〜…やりますぅ…」



寝起きの悪い子どもみたいな口調でそう言うと、アイツは俺から離れ
た。そして「もう飽きた」という表情で、押収物に向う。
ふと、振り向いて手にしていた缶を、俺に放った。「やるよ」と呟い
て。



「いらねぇし…」

「つーかさ、お前。何しに来た訳?」



明らかに鬱憤を俺に向けているな、コイツ。



「警部殿に用だったんだよ。もう済んだ」

「右京さん?」



興味が警部殿に移って、「何だったんスか」と目で問い掛けている。
警部殿は包みを開けた箱を、ヤツに見せた。



「千花さんからです」

「わぁ〜…美味そうですね!」



ん?食い物なのか??
ヤツの声につられて、俺もその箱の中を覗いてみる。そこには、手作
りのチョコレートがキレイに並べられていた。



「いただきましょうか?僕は紅茶を淹れますが、君もたまにはどうで
す?」

「そうですね。いただきます!」

「伊丹刑事は…」

「いや、俺はもう…」

「ああ。わざわざ”義理”を食べる必要もありませんか?」

「は?」

「千花さんに、ありがとうございました。とお伝えください」

「いや、ちょっと待ってください。あの…義理って?」

「え?義理チョコだろ?コレ」

「??」

「今日は、バレンタインデーですよ?」

「!!」

「何?お前まさか、貰ってねーの?!」



囃すバカに、殺意を覚える。
そうか。
だから珍しく日曜日にこだわってたのか、ちーのヤツ。でも、それな
ら警部殿の前に俺だろう?!いや。一も二も無く俺だよな??



「随分、よくなりましたね?」

「は?」

「顔色です。来られた時は、真っ青でしたけど。ああ、もう大丈夫で
すね」

「え?お前、体調悪かったのか?」



チョコを口に運ぼうとしていたアイツが、少しだけ目を見開いて心配
そうな顔をする。それがあんまりにバカ面だったから、俺は吹き出し
てしまったんだ。



「ああ。テメェの所為でな!」

「はぁ??」



イミフメイと言わんばかりのヤツの額にデコピン一発かまして、俺は
特命係を後にした。背後で喚いてる男は無視して。





  いる。
  アイツは確かにココにいる。
  そう。これが現実だ。
  疑ったなら、裏を取る。
  全く、刑事の基本じゃねぇか。

  それを、気付かせてくれたんだな。





             * * * * *





「お疲れ様!」



警視庁の入口に、ちーが立っていた。



「お前…」

「休日出勤って、やっぱ大変?」

「あ〜…あんま意識してねぇからな、俺は。特命係と違って」

「そか」



映画館に入る前、休日出勤喰らってるバカな亀がいることを話してい
たのを思い出す。
ずっと待ってたのかな?
聞いたところで、答えはしないだろうけれど。



「あ。これ、飲めるか?」



俺の手の中で、幾分温かくなってしまった”まろやかイチゴ”を見せ
てみる。



「うん!好き!何?どしたの?」

「…大バカな亀から」

「うわ、そーなんだ」

「あ!礼とかいらねーぞ。そういう気持ちのモンじゃねえから」

「…そうなんだ?」

「…あと、」

「ん?」

「警部殿が、ありがとうございました。って」

「そか」

「…ありがと、な」

「え?」

「体調、戻ったから」

「うん!じゃあ、コレ」



ちーの手の中には、赤いキラキラの包装紙に包まれた、正方形の箱。



「手作りするの、初めてだから…ちょっと自信無いんだけど…」



渡す本人まで真っ赤になって、瞳がキラキラしている。
ったく、どこまでカワイイんだか。
受取って。言えない代わりに、ちーの頭をわしわしと掻き回してやる。



「だから!それやめてってぇ〜!」

「サンキュ」



さて。ホワイトデーには何を返そう♪
こんなにお前が大好きだって、少しは伝わるモノがいいよな。
いつまで経っても、素直になれない俺だから。
せめてカタチで伝えよう。



お前ならわかってくれるよな?ちー?



              .☆.。.:*・ HAPPY END .☆.。.:*・


上へもどる

inserted by FC2 system