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「その腕いっぱいに・・・」−『相棒』二次創作小説


『相棒』のキャラクターを使用して書いておりますが、本編とは全く関係ありません
  cometikiオリジナルストーリーです (c)テレビ朝日・東映
※これはやや読みきり 『相棒 ふたりだけの特命係』TOPの下に作品がまとめてあります


【はじめに】



この作品は、咲逆冬さんの小説『この腕いっぱいの・・・』の花屋の
店員さん目線で書かせていただきました。

咲逆さんのお話を読んでから、ずっと書きたくて。
ご相談させていただいたところ、快諾していただきました。

本当にありがとうございます!!
感謝しております!!

かなりふぁんたじー色の強いモノになってしまったのですが、書けて
すごく嬉しいです。

咲逆さんの作品と一緒に読んでいただけたら、幸いです。



 原作:『この腕いっぱいの・・・
 作者:咲逆 冬

 作者HP:『Sing Like a Hug
      http://blog.livedoor.jp/kogoe_sakisaka/




本当に本当に、ありがとうございました!!
咲逆さんへ、心からの感謝を込めて。。。

                     2010.04.18 cometiki










































壁掛けの時計を見る。

僕はつけていたエプロンを引っ張ると、グローブみたいな手で皺を伸ば
した。

これをやると、妻や娘たちから「絵本のクマさん」と呼ばれるけど仕方
ない。大切なお客様がやって来るのだから。





「コツリ」と革靴の音がして、”彼”の来訪を報せる。



敢えて声は掛けない。

彼はきっと一人で選びたいだろうからね。





20分。

彼の様子を伺っていたけど、一向にお声が掛からない。

彼自身気付かない溜息を聞いて、僕のお節介心が動いた。



 「どのようなものをお探しですか?」



笑顔で訊ねれば、曖昧な笑みを返して、彼は俯いてしまった。

タイミングが早過ぎたようだ。
でも、放っておけないし。



 「どのような方ですか?」



問い方を変えてみれば、キョトンとした表情と目が合う。

彼の心のバリアを緩めちゃう人って訳だ。
思わず顔が綻んでしまう。



 「どのような方に贈られるのでしょうか?」



もう一度、優しく訊ねてみる。
”彼女”をよく思いだせるように。



 「和装が似合う…キリリとした顔立ちの…美しい、細かいところま
 で気配りができる素晴らしい女性…でしょうか?」



言いながら彼は、自分の言葉に驚いているようだ。



 「分かりました、少々お待ち下さい」



ごめんね。
あなたの口から聞きたかったんです。
大切な、大切な人のこと。

だって言葉にすれば、その想いはもっと確かになって、宝物になるで
しょう?
それに―…

「お待たせ致しました。コチラでいかがでしょう?」と、まとめてみ
せれば、彼はこっそり瞳を輝かせた。

完成品を手渡すと、大切に受取ってくれた。
支払いを済ませて、彼が店を出ようとする。



 「きっとお似合いだと思いますよ。年に一度の彼女の記念日が、素
 敵なものになりますように」

 「ありがとうございます」



それに、今日は記念日なんだから。

ね?杉下右京さん♪






バタバタと乱れた足音が聞こえてきた。

うん。これは”彼”だ。



 「いらっしゃいませ」

 「あっ…」



額には汗、そして荒い息。
どれだけ駆けて来たんだろう?

一瞬の沈黙の後、回れ右しかけた彼。
焦って目的を見失ってしまっているらしい。



 「どういったものをお探しですか?」

 「どういったものって…あっ!」



自分から飛込んで来ておいて、彼は怪訝な顔をする。
面白い人だなぁ。

笑顔で首を傾げて、望みを促してみよう。



 「えっと…出来るだけゴージャスに!いかにもって感じで…一目見
 ただけで喜びそうな…あ、でも…そこまでじゃなくても良いかな?」



「少し、お待ち下さい」と言った僕の声は、彼の耳には届いていない
ようだ。
まだ必死に”彼女”のことを考えている。

本当は全部聞いてあげたいんだけど…時間がないから、ごめんね。

シルクの紅いリボンでまとめてみせれば、彼はキラキラと笑った。

慌しく支払いを済ませ、「よし…っ!」とそれを肩に担いだ。
走り出そうとする彼に声援を送る。



 「間に合うと良いですね、結婚記念日に」

 「…ありがとうございますっ!!」



だって、時間は待ってくれないから。

走って、走って。
一分、一秒でも早く、愛する人の元へ戻れますように。

ね?亀山薫くん♪








 「お父さん。渡せたの?」



居間から店先へと、長女が出てくる。
僕を見上げる表情は、小さい頃のままだ。



 「うん。バッチリ」



使ったハサミを缶の中に戻すと、長女は肩を竦めた。



 「”そこ”に戻すってことは、まだ終わらないんだ?」



その問いに、やわらかく笑って僕は応えた。








             * * * * *








父曰く。



 「大型トラックがハンドル切りそこなって突っ込んできてさぁ。こ
 っちはいくらエアバック装備でも軽自動車だからね、ダメかもって」



お通夜を終えた、夜遅く。
泣き疲れた千花を寝かせた私の前に現れた、父。

別段、驚きはしなかった。



泣いている子どもが居るからと、花をタダであげて。この花は今日が
一番キレイだからと、学校や病院や、老人ホームに配って回るような
人だった。

「売らなきゃお金にならないよ」と、子どもながらに思っていたが、
不思議と家が貧しいことはなかった。

人が欲しいと思うモノを見抜いては、美しい花束を作る。

それはまるで魔法のようで。
実は父は魔法使いなんじゃないか?と思っていた。

高校を卒業しようかという歳になって、今でもそれを信じている訳で
はないけれど。
フツーの人じゃない、とは思っていた。

…思っていたけど、まさかここまでとわ!?



 「成仏できないの?」



私の質問に、父は目を丸くした。



 「やっぱり美花だ♪」

 「え?」

 「弱そうに見えて、ここぞって時には強いんだよ。逆に千花は、強
 がって見せてるけど脆いからね。心配だなぁ…」



父のペースに巻き込まれると、異常なことも正常に思えてくるから危
険だ。
一般常識ってものが通用しないんだから。。。

ダメだ。既に、この状況に慣れつつある。



 「話を逸らさないで!どうしているのよ、ココに?」



今の状態を楽しんでいるかのように、父が微笑む。



 「まだね、届けきれてなくてさ」

 「は?」

 「死ぬ時に見えるっていうだろう?…えっと…」

 「走馬灯?」

 「それ!それが見えた時、”これで終わるもんか!”と思って振返
 ったらさ、見えたんだよ。未来が」



思考が停止する。

私の理性が「これは夢だ」と思い込もうとし始めた。



 「未来って背中からやってくるっていうけど、アレ本当だよ!」

 「死んじゃった人に、未来なんてある訳ないでしょ!」



大声で叫んで「ハッ」とする。

これが父の望んだ結果ではないのだ、と。

本当なら今日だって母に叱られながら、商店街の人に花を配っていた
かもしれないのに。



 「ごめんなさい」

 「いいや。美花の言う通り”未来”っていうのとはちょっと違うのかもし
 れないな。ただ、僕がお花を届けなきゃいけない人がまだ居るってい
 うのがわかったんだ」

 「それで?」

 「担当者の人に説明したら、納得してくれたよ。届け終わるまで居
 てもいいって。でも必要な時以外は、出ちゃダメだっていうんだ。
 しかも”必要な人”にしか姿は見えないんだって!ケチだと思わな
 い?」



父は腕組みをして、頬を膨らませるけれど、普通。死んだ人が現れた
ら、大抵の人は驚くだろう。
それに納得させたって、何?
話し合いなんて出来る訳?問答無用なんじゃないの??

様々な考えが頭を占領して、パンクしそうになった。



 「だから、大学行きなさい」



父が、何を言っているのか、訳がわからなかった。



 「諦めることないよ。美花はすごく頑張ったんだ。こんなことくら
 いで、夢を諦めるな」

 「…こんなこと…って」

 「金はどうとでもなるから、な?」



どうしてわかったんだろう?

千花を父母の代わりに育てていこうと、決意したこと。
その為に、進学を諦めたこと。



 「だから行け。大学」



ふわりと笑う父を見て、私は泣いた。

2人が亡くなって、はじめて。



私が泣き止むまで、父は居てくれた。

「はあっ」と深呼吸して、父を見る。



 「私、お店継ぐよ」

 「美花!?」

 「だって、お父さん。ウチで花束作るんでしょう?お店開けとかな
 いと、お客さん来れないじゃない」

 「そりゃそうだけど…」

 「ついでに、出て来れる時。会えたら、色々教えて?」



自然と笑えた私は、その時。
父から見えない花束を、確かに受取った。








             * * * * *








 「昨日、千花が”どうしてまだ、お父さんのハサミ出してるの?”
 って聞くから、お守りだって言っといた」

 「あはは。すまないね」



あの夜。

父が1つだけ、私にした願い。



  ”ハサミをいつもの場所に置いておく”



全て届け終えたら、机の一番上の引き出しに収めるから、と言って。

これは千花の知らない、父と私だけの秘密。

…話しても信じてもらえない可能性のほうが高いんだけど。



 「成仏する気、無いんじゃないの?」

 「ヒドイなあっ!するよ。ちゃんとします!全部届け終わったらね」



そう言って、父は2階へ視線を移した。



 「お姉ちゃん!何かコゲ臭くない?」



バタバタと階段を駆け降りてくる千花に「はっ」とする。



 「ヤダ!お鍋かけっぱなし!!」

 「火の用心♪」

 「お父さんのイジワル!」



イタズラ小僧のように笑うと、父は指を「パチン」と鳴らして消えた。

ああすることで、”父から花を受取った”という人の記憶があやふや
になるらしい。

まあね。
そうしてくれないと、大騒ぎになるから困るんだけど。。。



 「お姉ちゃん。お鍋の中、悲惨なことになってるよ?」

 「ごっ!ごめん!ちょっと、ボーッとしててっ!!」



居間に戻ろうとしたら、千花が店先に出て来ていて驚いた。



 「大丈夫?疲れてるんじゃないの?」

 「平気。本当にボケてただけだから。元気、元気!」



この春から、千花も社会人になる。

進学しなかったのは多分、私を気遣ってのこと。
自分の所為で夢を諦めさせた…と負い目を感じているのだ。

そんなことないのに、と思う。



 「あ…あのさ。もう一度、大学行くの考えてみない?」



「え?」と首を傾げる私に、千花が一気に捲くし立てた。



 「月曜日から金曜日の日中は、藤崎のおばさんがお店やってもいい
 って言ってくれてるの。私もシフト、土・日出勤にしてもらえば平日休
 みになって手伝えるし。あ。太朗君にも話はしてあってね。それから、
 学費はアタシが工面するから!」



面喰っている私の耳元で、父の声がする―…



  ”夢を諦めるな、美花―…”



言葉を失くしてしまった私を見て、戸惑う千花。
沈黙に耐えられず、視線を彷徨わせる。



 「あ、れ?注文入ったの??」



千花がテーブルの上に置かれた、オレンジのバラの花束を指す。

それはまるで、魔法で出来たような花束で。



  ”だから行け。大学―…”



全く。
私にくらい言ってくれればいいのに。

苦笑しながら、花に託された想いを腕いっぱいに抱締めた。



 「ありがとう、千花。考えてみる」

 「う、うん。よかった!」



千花は私の行動を理解しかねていたが、前向きな返事に破顔した。

その笑顔に、思わず涙が滲む。

そして。

父の花束を受取った人、皆。
こんなあたたかなきもちに包まれているんだろうな…と思った。





   惜しみない愛を

   誰より大切なあなたへ

   その腕いっぱいの花と共に―…





                .☆.。.:*・ HAPPY END .☆.。.:*・


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