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伊丹さんの恋「コーヒーとチョコレートケーキ。」−『相棒』二次創作小説


『相棒』のキャラクターを使用して書いておりますが、本編とは全く関係ありません
  cometikiオリジナルストーリーです (c)テレビ朝日・東映
  
※”伊丹さんの恋”シリーズ作品は 『相棒 ふたりだけの特命係』TOPの下に
  まとめてあります
  興味を持たれたかたは覗いてみてやってくださいませw

                                 2010.11.26 cometiki拝









































例えば最近。
某リゾートホテルのコーヒーの味を覚えた。

覚えたくて覚えた訳じゃない。
半ば強制的に。



 「先輩。これじゃストーカーっスよ?」

 「うっせ!黙って飲んでろ!!」



缶コーヒーだと何杯飲めるんだか…
一点注視の男を尻目に、溜息を吐く。

正直、
味なんてそんなに変わらないんじゃないだろうか?
黒い液体に口付けて思うこと。

まあ。
目の前の男は「美味いコーヒーが飲みたい」という理由で
これを啜っている訳ではないので、満足なんだろう。



 「ちょっと!仕事中なんじゃないの?!」



銀のトレイを小脇に抱えた千花ちゃんが、
注文を伺うフリでやって来た。

先輩は途端に身体を小さくする。
…怪しいことこの上ない。



 「休憩だよ、休憩!な?芹沢!?」

 「つーか、サボリですけど」



僕の正論は拳によって、黙殺される。
…ココ、ホテルのラウンジなんですけどね。
本当にTPOを考えない人だよなぁ。



 「芹沢さん、いつもごめんなさい」



先輩を目だけで諌めると、千花ちゃんが頭を下げる。

白い長袖シャツに黒のベストとタイトスカート。
それから、
細くて綺麗な足にお似合いの、黒のパンプス。
これが今の彼女の勤務服。

この春入社してから、宴会場でのサービス業務を中心に、
合間でレストランやラウンジでの接客を担当している。

そんな千花ちゃんの制服姿を初めて見た先輩は、
「丈が短過ぎんだろ!」と怒り狂った。
思い出すと、今でも笑ってしまう。

だって、他の女子社員も皆、同じ丈でしょうに…。
全く周囲が見えてないっつーか。

でも、随分馴染んだなぁ…千花ちゃん。
ちゃんと制服を着られるようになった。



 「平気だよ。慣れてるから」



口元を緩めると、安心したように千花ちゃんは微笑んだ。


…っとになぁ〜…
なんでこんなカワイイ子が先輩なのかなぁ―…。
と、未だに思う。


だけど。
そう不思議に思うのは僕だけではないようで。



 「感じ悪ぃ男だなぁっ?!」



憎まれ口叩きながらも、独身貴族(一応)の僕を誘って、
客になりすますくらいしか手段がないのだ。
この男には。

馬鹿高いコーヒー代を払って。

…一度も奢ってくんないんだよなぁ。
「金が無い!」と早々に断った三浦さんを、
心から尊敬しますよ、僕わ!!





「コトン」と目の前に、真っ白な四角い皿が置かれる。
そこにはなんとも美しいチョコレートケーキがのっていた。

部屋のインテリアにしてもいい位のヤツが。

先輩と僕に1つづつ。



洗練された指先を辿れば、これまた眉目秀麗な顔があった。

20代後半から30代前半。
身長は180cm位で、細身。
でも程好く筋肉はついてそうな身体。
黒に近い茶色の髪の毛が、色白の肌によく映えている。

…ホテルマンか?

モデルですと言い放っても、納得させるだけの貫禄を備えた男は、
それでも親しみに満ちた笑顔で僕達に話しかけた。



 「コレどうぞ。サービスです」

 「こ…困りますっ!高林さん!こんな…」

 「試作品だよ。さっきシェフが作ったんだ。
  できれば常連のお客様に食べていただいて、
  感想もらったほうがいいだろう?」



「ね?」と完璧なウインクをして、
高林は千花ちゃんを黙らせる。

男は続けて僕達に「どうぞ」と促す。


狂犬の目が一瞬鋭く光ったのでハラハラしたが、
先輩の手は荒々しくもフォークを掴んでくれたので
安心した。


僕もそれに倣ってケーキを口へ運ぶ。

ブラックココアの生地と生クリームが、
絶妙な味をほろりと広げる。



 「あ…うま……」



素直な感想が口を突いて出た。
先輩をコクコクと首を縦に振る。

「よかったです」と、高林は目を細めた。



 「でも驚いたな〜斉藤さんのご家族だなんて。
  僕、てっきりストーカーだと思ってました」



男の言葉に、僕と先輩はモロに食べてたモノを喉へ詰めた。
咽ながら、冷めたコーヒーを流し込む。

…言わんこっちゃない。
バレバレじゃないですか?!
どんだけ異色オーラ出してたんだか。

先輩を睨むと、千花ちゃんから水を手渡されていた。

…あ。いいな、ちくしょう。



 「あれ?僕、変なこと言いました?」



こんな光景を見ても、大きな瞳をぱちくりさせるだけの高林は、
多分相当な天然なんだろう。

ストーカーってのは仕方ないにしても、
いつ、どこで”家族だ”と思ったんだろう?
…全然似てないと思うんだけどね。


胡乱な目で僕達に見返されて、
高林は千花ちゃんにすがった。



 「お父さんじゃないの?」



指をさされた先輩が、身を固くする。



 「違います」



凛とした声で答えたのは、千花ちゃんだった。

高林は益々慌てた表情で、「おじさん?」「お兄さん?」などと
見当違いな問いを繰り返す。

その全てに千花ちゃんは「違います」と、丁寧に答えた。



 「私の彼氏です」



男の問いが底をつく頃、
千花ちゃんはハッキリとした口調で言い切った。



 「う…嘘、だろ?」

 「本当です。付き合って1年位になります」



千花ちゃんのダメ押しに、高林はガックリと肩を落とす。
血の気の引いた顔を片手で隠すと、ゆっくりその場を後にした。

その背を、千花ちゃんは黙って見送る。



 「大丈夫、なのか?」



不穏な空気を察した先輩が、千花ちゃんに声を掛ける。
彼女は頷いた。


大丈夫な訳は無いんだけどね。


どう見たって高林ってヤローは、千花ちゃん狙いで
色んな誘いをかけていたんだろう。

でも千花ちゃんのことだから、それはやんわりと
角が立たないように言葉を選んで断ってたんだ。

それが僕達の所為で全てパーになっちゃった。



 「気にしないで。本当のこと言っただけだもん」



肩を竦めて、照れ臭そうに笑う千花ちゃんは、
どこかスッキリとして見えた。

よく知らないヤツだけど、高林クンに同情。

顔もよくて気配りだって出来る青年が、まさかの惨敗!!
しかも相手が………



 「んだよ?何見てんだ?」

 「なんでもないです。それよりこれ食ったら行きますよ!」

 「わーったよ」



せめて優しさという名のチョコレートケーキだけは、
残さず食べようと思った。
なんとなく。
ケジメとして。



 「アタシも戻るから。気をつけてね」



千花ちゃんは腰の位置で先輩に手を振ると、
その後、僕に軽く一礼して職場へと戻って行った。

若くて純粋で、何より美しい花。
きっと多くの人に愛されるだろうに―…



 「ずっと先輩一筋なのかなぁ…」



僕の言葉に、先輩が吹出す。
咄嗟に口は押さえたものの、鼻からケーキの残骸が零れた。

高林クンの痛みに比べたら軽いモンか。

涙目で胸を叩き、水を煽る先輩。



 「ったり前だろーがっ!!」

 「なら、この”張り込み”は今日まででいいですね」

 「あ゛ぁっ?!」

 「普通にお茶しに来るのなら、
  いつでも付き合ってあげますから」



口角を上げた僕を見て、目を丸くした先輩は苦笑する。
ようやく千花ちゃんの立場を理解して。

消えない不安は、胸の奥にしまったようだ。
一応。



 「何様のつもりだよ?」

 「芹沢様ですよ。知りませんでしたか?」


                  .☆.。.:*・ HAPPY END .☆.。.:*・


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