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伊丹さんの恋「サンタクロースがくれるもの。」−『相棒』二次創作小説


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  2011.03.23up




歓送迎会に、ブライダルフェア。
七夕に、納涼会。
ハロウィンが終わったら、
忘年会にクリスマス。


ホテルに勤め始めて、
千花はイベントまみれな日々を送っている。

……残念なことに全て仕事ではあるが。

けれど。
毎月といっていい程変わる、ホテル内の装飾には、
楽しみを覚えていたりする。



入社して初めての12月。

同期の男の子達は、泊り込みの日もあるらしい。
女の子達は、泊まりとまではいかないものの、
残業は当り前という日々だ。
たまに、休日出勤もある。

宴会場での配膳や、客室清掃、皿洗い。
レストランでの接客など。
皆、一人何役もこなしている。

先輩社員に至っては、
バイトの方たちへの指導も加わり、
目の回る忙しさだという。

千花も日々の業務を必死にこなしてゆくので
精一杯だった。



 「斉藤さん、ごめん。
  バイト君が一人来られなくなっちゃってさ。
  ヘルプ頼めないかな?」



就業時間間際にこんなことを頼まれるのも、
日常だった。
「わかりました」と応えて、
上階のフレンチレストランへ向う。

レストランの制服である、
黒のショート丈のエプロンをつけて店内へ出た。


折りしも今日はクリスマスイブ。
フランス料理の店は、予約客でいっぱいだ。


幸せそうなカップルが目に留まり、足を止める千花。
笑いあう男女を、思わず伊丹と自分に置き換えてしまう。
しかし、
叶わない夢だと頭を振って、現実へ戻る。



 「あ!千花ちゃんだ!」



顔を上げると、目の前に薫が居た。
特に周囲を気にすることもなく、
会えて嬉しいとばかりに大きく手を振っている。



 「亀山君」



薫の隣に立つ右京が、静かに諌める。
それに「あっ」と気付いて、薫は手を下ろした。



 「もぉーっ。場所考えなさいよね!薫ちゃん!」

 「いやぁ…久しぶりだったからさ、つい」

 「ついじゃないわよー。ごめんね、千花ちゃん」



薫の後から美和子が出て来て、苦笑う。
「大丈夫ですよ」と答えると、
右京の後からたまきが現れ、微笑んだ。



 「すっかり一人前ねぇ」



千花の制服姿に、感嘆の声を上げる。



 「いえっ!まだまだですっ!!
  そっ…それより今日は皆さん、お揃いで?」



赤面するのを誤魔化しつつ、千花は話を逸らした。



 「それがさ。
  コイツがココのディナー券もらってきたんだよ」

 「Wデートするハズだった子が、
  急に仕事で行けなくなったからって」

 「大変だな。新聞記者は」

 「事件が起きたら、土日も無いのは刑事だって一緒でしょ」



「それもそうか」と笑う、薫と美和子。
その会話から、千花は何かが起きたのだと悟る。



 「もう解決しましたから、心配は無用ですよ」



表情を硬くした千花に、右京は優しく告げた。
「そう…ですか」と安堵しながらも、
何が起きたのかわからない不安は消えそうになかった。



 「千花さんは、サンタクロースって居ると思いますか?」



右京の脈絡の無い問いに、呆然となる一同。



 「右京さん。
  千花ちゃんだっていい大人なんですから...」



空笑いしながら、薫が遠回しな答えを返す。
右京は「知ってますよ」と言わんばかりの瞳で、薫を見た。
そして静かに千花へ視線を戻すと、ハッキリと言った。



 「サンタクロースは居ますよ」



天才の一言は、他の4人を凍結させた。
各自、様々な仮説や言葉の裏を探ろうと頭を捻るが、
正解は導き出せない。



 「あの…何か北のほうの国に居る人ですか?」



最初に口を開いたのは、やっぱり薫だった。
恐る恐る確認するように。
「フィンランドでしょう」と、薫のフォローに回る美和子。



 「手紙を書いたら、クリスマスにお返事が貰えるのよね?」

 「夢があっていいですよねー♪」



たまきと美和子は、ふんわり乙女のように笑う。



 「それは”サンタクロースの格好をした人”でしょう?」




右京は間違いを正すだけ、というように
淡い夢を砕いてしまった。

薫は”降参です”とばかりに、頭を掻いた。



 「他にサンタって居ますか?」

 「居ます」



首を縦に振る、右京。
薫は美和子と顔を見合わせオロオロする。
たまきも困惑した表情で、千花に説明を始めた。



 「ごめんなさいね。右京さんて昔からこういうもの好きで…」

 「あー…幽霊とか見たいって言ってますもんね」



合点がいったと納得する薫の横で、
「亀山君。幽霊とサンタクロースを一緒にしないでください」と
右京が冷ややかに言った。



 「えっと…右京さん?結局、何を…??」



話を本筋に戻すべく、美和子が問う。
右京は少しだけ背筋を正して、答えた。



 「サンタクロースは靴下の中でなくとも、
  プレゼントを運んでくれる。ということです。
  だから、
  千花さんの元にも必ずやってきますよ」





             * * * * *






深夜。
全ての業務を終え、ホテルを後にする千花。

右京達が帰った後も忙しかったのだが、
「サンタクロースは居る」という言葉が頭から離れず。
……というか、神経がそっちに集中していた所為か、
あまり疲れずに済んだ。



 「右京さんのおかげだなぁ」



千花は独り、思い出し笑いをしてしまう。



 「何笑ってんだよ?」



不機嫌な声が近くでして、弾かれたように顔を上げる千花。
そこには声と同じ、不機嫌そうな伊丹が居た。

最近、ホテルのラウンジに姿を見せなくなった。

その代わり。
夜が遅い千花を心配して、
たまに迎えに来てくれるようになったのだ。

……就業時間がハッキリしないから、と千花は一度断った。
しかし。
「来られる時しか来れねーから」と悲しそうに言うから、
思わず「お願いします」と伊丹に頼むことにした。



 「何かあった?」

 「遅せぇし」

 「うん。ごめんね」



明らかに八つ当たりだとわかることでも嬉しくて、
思わず笑ってしまう千花。

千花の笑顔に毒気を抜かれると、
伊丹は後悔したようにボリボリ頭を掻いた。
そして深い溜息と共に、吐き捨てた。



 「バカメの野郎がムカツくんだよ」



千花は右京が言っていた”解決しました”の意味を考える。
きっと特命係が事件をサッサと解決して、
伊丹達はまた悔しいおもいをしたんだな…と想像した。



 「お疲れ様」



詳細は聞けないから、
せめてもと目一杯の笑顔で千花は伊丹を労った。

ところが「ふい」と顔を背ける、伊丹。
益々、苦々しい表情になってゆく。

千花は首を傾げつつ、言葉を待った。



 「今日は…くっ…クリスマスイヴ…なんだってな?
  アイツがくだらんメールしてくるまで気付かなくて…
  その……手ぶらなんだ…」

 「あ!アタシも―…」



2人を、気不味い沈黙が包む。



と。目の前にふわりと白いものが―…
見上げればひらひらと小さな雪が落ちてくる。



 「ホワイトクリスマスだぁ」



瞳を輝かせる千花に、伊丹は口元を緩ませる。

頬に雪が落ちると同時に、
「くしゅんっ」と可愛いクシャミをする、千花。

伊丹はぐいっと千花の腕を取り、自分の腕に絡めた。
驚く千花に「こーしてりゃ、ちったぁ温けぇだろ」と、
上空に視線を移して呟く。

くすりと笑って、千花は両手を絡めた。

「温かい」という千花に、伊丹は満足気に微笑んだ。





   ”だから、千花さんの元にも必ずやってきますよ”






 「ねぇ」

 「ん?」

 「メリークリスマス」

 「おう」



蘇えった右京の言葉に、
この温もりがサンタからのプレゼントなんだ。と
千花は確信したのだった。


              I wish you a merry Christmas



        .☆.。.:*・ HAPPY END .☆.。.:*・


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