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伊丹さんの恋「2月14日を過ぎても。」−『相棒』二次創作小説


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  2011.03.23up




 「斉藤さん、お腹空いてない?」

 「大丈夫です」



頭上で飾りつけを取り替えている、
男の先輩に笑顔で答える、千花。



 「残ったチョコなら、いくらでも食べていいからね」



それには曖昧な笑顔で応えて、千花は黙々と作業する。



現在。
時計の針は22時を回ったところ。

1階の入口近くにある、ホテル直営のパティスリー店で
終わったバレンタインイベントの飾りつけを片付けている。

同時に、
明日からのホワイトデーイベントに向けての装飾も
行っていたりする。



千花の勤務時間はとっくに終わっていたけれど、
人手不足で困っていた先輩を放っておけなかった。

それに明日は、10日ぶりの休みだし。

風邪やらインフルエンザやらで、
欠勤している人の分まで頑張っている皆に、
少しだけ申し訳ない気持ちもあったから。



赤とピンクで彩られたいた売り場が、
白と淡いブルーに変わってゆく。

日持ちしないし、コストも高いから生花は無理だけど、
白バラのアレンジメントを置いたら映えるのにな…と
手に持った紙の花を見つめて、千花は思う。



 「もうホワイトデーに何もらおうか、考えてんの?」



脚立から降りてきた先輩が、にやり口角を上げて問う。



 「え!?いや、そんな……あげてないですし」

 「あれ?斉藤さん、彼氏居たでしょ?」

 「はい…」



小さく返事をして、溜息を吐く千花。

昨年のクリスマスもそうだったが、
ホテルに勤め始めて、今まで以上に
イベント行事に囲まれる毎日となった。

しかしそれはあくまで職場でのことで。
社会人一年目の千花は、プライベートにまで
手が回らずにいる。

残業は当り前で、
少ない休日は家の手伝いに宛てていたから。

実質、千花に”休日”というものはなかったが、
美花が「大学へ行く」と言ってくれたので、
苦ではなかった。

むしろ嬉しい程だ。

ただ、
その所為で疎かになっている部分もある訳で―…。



 「まだならこれから渡せばいいよ」



「はい」と手渡されたのは、売り物だったチョコレート。
社員だから、定価より少しだけ安く買えるのだけど……



 「今年はもういいです」



このホテルのチョコレートは、美味しい。

バレンタインだけど、
「自分用にも」と買ってゆかれるお客様も沢山いらっしゃる。

でも。
自分の勤務先の売り物……というのは、
なんだか手抜きに思えて。
千花は手を伸ばせずにいた。

もっとちゃんと、
伊丹の好みを考えて選びたかったのだ。

………出来なかったけれど。





             * * * * *





深夜0時前。

千花はようやく仕事を終えて、ホテルを出た。
寒さに身を竦ませながら、カバンの中から携帯を取り出す。

まだ2月14日だし、せめてメールでも送ろうと―…



 「お疲れ」



聞きなれた声に顔を上げれば、そこに伊丹が立っていた。
驚いて固まっている千花に焦れて、歩み寄る伊丹。



 「ったく。どんだけ働かされてんだよ?
  19時終りっつってなかったか?」

 「う…うん。
  ちょっと、明日からのイベントの飾りつけしてて…
  あ、の…待っててくれたの??」



TVでも取上げられている大きな事件に、
伊丹達も関わっていて、この1ヶ月。
ロクに連絡も取れなかった。

だから千花は、この状況がにわかに信じられないでいた。



 「いや…最近、その…顔、見れてなかったから…な」



伊丹は消入るように呟くと、俯いてしまった。



 「ありがとう!ごめんね!」



愛しい人の手を取り、微笑む千花。

伊丹がここに居るということは、
どんな形であれ”時間が取れた”ということだ。

「はた」と、嬉しさに消されていた悩みを思い出す。



 「わわわっ!本当に、ごめん!!」

 「いや。俺の勝手だし」

 「そーじゃなくて!バレンタイン!!
  私、チョコ用意してなくて………」



重大事件のように青ざめて、震えたりするから。
伊丹は目を細めて、千花の頭を右手で優しく撫ぜた。



 「いいよ。無理すんな」

 「だって…」



それなのに。
千花は涙目で、まだ何か言い募ろうとする。
伊丹を想って必死に。



 「疲れてる時はよ。甘いモンがいいんだろ?」



とけるように笑って、
伊丹は左のポケットから赤い箱を取り出した。
”HAPPY VALENTINE”が刻印されている
ハートのシールつきの……。



 「こ…これ……?」

 「”逆チョコ”ってのも流行ってるらしいじゃん」



おずおずとチョコを受取ったのを見ると、
伊丹は千花を抱締めた。



 「だから、いんだよ。無理すんな」



伊丹の胸の中。
その言葉に、千花はほろほろと甘い涙をこぼした。



         .☆.。.:*・ HAPPY END .☆.。.:*・


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